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朝日新聞柏支局長のコラム

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続くコロナ禍

 「なぜ県が謝ったのか、理解できない。私は謝らない」「国は『感染予防しろ』だけで何もしていない。方針も変わる」。野田市長は8月末の定例会見で新型コロナの感染防止策に絡み、こう話した。怒気を含んでいた。
 きっかけは、県と共同開設した自主検査で陽性者がオンライン登録するシステム「陽性者登録センター」。委託業者が都内にあり患者数は都発表分に計上された。感染症法に基づき以前から行われていたが、県は非があったとし、市も対応を見直した。市長は一部記者から、見直しへのコメントを求められた。
 医療ひっぱくの回避に向けセンターをつくり、皆の容体は把握できている。なのに判断が間違いだったかのようにされる。振り回されていると感じる市長は、我慢がならなかったようだ。
 8月上旬、「念のため」と受けたPCR検査で陽性になった。熱はなく、せき込んだが程なく止まった。自宅療養を経て、仕事に戻った。軽症だった。
 夕食のおかずに刺し身をとる。何げなく口に運ぶが、付けたしょうゆは今も以前のように魚の甘みを引き出してくれない。「まだ、後遺症がある」。そう思ってハッとするたび、市長や、これまで話を聞いたコロナで家族を亡くした人たちの声を思い出す。

朝日新聞柏支局長 斎藤茂洋

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