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朝日新聞柏支局長のコラム

時計

 旧関宿町(現野田市)で幼少期と晩年を過ごした終戦時の首相、鈴木貫太郎が、自身が通った市立関宿小学校に1936(昭和11)年に寄贈した柱時計が、オーバーホール(分解・修理)に出され、約2カ月の作業を終えて10月25日に学校に戻った。
 このゼンマイ式の振り子時計には様々な人の思いが込められている。時計が贈られた36年、鈴木は2・26事件で重傷を負った。このことを聞いた学校の教員と児童が地元の神社で回復を祈願。これを知った鈴木がお礼として贈ったという。83年前から児童とともに時を刻んできたことに歴史を感じ、感動した。
 考えてみると、時計には不思議な魅力がある。家の掛け時計、腕時計……。古くても、使い続けている人は多いだろう。その人、その人によって時計に込められた思いがあると思う。
 私の腕時計は2009年に出張先の欧州で購入したもの。高価なものではなく、それなりの値段のスポーツウォッチのような時計だ。この出張では極寒のモスクワで取材に苦労し、ドイツのホテルでは暖房が故障した。徹夜で原稿も書いた。「何とか頑張った。そうだ、時計を買おう」と突然思った。それ以前の欧州出張で、転んで足の甲を骨折し、転んだ弾みで腕時計をなくした苦い思い出も重なり、時計を購入した。
 この時計を見ては当時のことを思い出し、今も使い続けている。

朝日新聞柏支局長 上嶋紀雄

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