読者投稿オリジナル童話

はいいろネズミの心配ごと

神田 由美(印西市 パート・42歳)

 

  ある森に、はいいろネズミが住んでおりました。
 はいいろネズミには今、心配ごとがありました。
 この前、木の実を取りに行こうと約束をしてちゃいろネズミと会ったのですが、はいいろネズミはちこくをしてしまった上に、あやまるのすら忘れてしまったのです。
 今さらあやまるわけにもいかず、はいいろネズミはこの友情は終わったんだと頭を抱えていました。 「おーい、はいいろネズミどん」
 ちゃいろネズミが家にやってきました。はいいろネズミはきっと絶交しにきたのだと思いました。
 ところが、ちゃいろネズミは 「なんだか君、元気が無いね。悩みでもあるのかい? 話してごらんよ」
 なんと、ちゃいろネズミは、はいいろネズミのことを心配してくれていたのでした。ほっとしたはいいろネズミでしたが、今度はこんなに心配してしまう自分がいやになってしまいました。 「ちゃいろネズミどん。この前、ちこくしてあやまらなかったこと、気にしてなかったのかい?」 「なんだ、そんなこと。気にしててくれたのか。それで元気がなかったんだね」 「オイラはもうこんな心配ばかりしている自分がいやになってしまったよ」
 そうなのです。はいいろネズミは今回のこと以外にも心配ごとがいっぱい。全部自分がやったことでみんなに嫌われたのでは? という心配ごとです。やめたいと思っていてもやめられません。ちゃいろネズミは何か考えているようでしたが、ゆっくりと話し始めました。 「はいいろネズミどん。実を言うと、あやまらなかったことは気がついていたんだ」はいいろネズミはドギマギしました。 「だけども、はいいろネズミどんのことだから、あとからきっと心配するだろうと思ったのさ。そう思ったら頭にも来なかった。オイラははいいろネズミどんのそういうところもふくめて好きなんだよ」ちゃいろネズミは前足を出しました。 「はいいろネズミどんはそのままでいいんだよ。これからも友達でいてくれるかい?」
 はいいろネズミはうれしくて、ちゃいろネズミの前足をとって言いました。 「ありがとう。ちゃいろネズミどんはまったくいいヤツだ」 ちゃいろネズミはこう返しました。 「人を心配して気づかうきみみたいなネズミをなんて言うか知ってるかい?『いいヤツ』さ」
 その後も、二匹の友情は長く続いたそうです。
 ある森のお話でした。

 




童話作家緒島英二さんより

 二匹のネズミの心のやりとりが、丁寧に描かれています。二匹の友情をいつまでも見守りたいものです。

 

Copyright(C) 2012 RESUKA Inc. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.

朝日れすかのホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。

ページトップへ