読者投稿オリジナル童話

ねらいすまして

ペンネーム じんしょう(流山市 自由業・42歳)

 

  さて、おてんばなノウサギです。
 このところ雨ばかりで、うちでたいくつしていましたが、ようやく晴れたので、ノウサギは元気よくそとへとびだしていきました。空には、大きなにじが、とてもきれいにかかっていました。ぬれた草が、ぴん、とはじけて、あたりに水玉がジャンプしています。
「雨のあとも、けっこうすてきね」
 ノウサギは、ふんふんと鼻をならしながら、すすんでいきました。と、そこへ、ノギツネのおしりが見えました。あたまをひくくして、何かをねらっているようすです。ノウサギも、そっとちかづいていくことにしました。
 ノギツネは、目のまえの池を、じいっ、と見つめています。
「ねえ、いったいなにを――」
「しいっ」と、ノギツネはふりむきました。「だめだよ、しずかにしないと、むこうへいっちゃうじゃないか」
 それからまた、ノギツネは、じいっ、と水の上をにらむのです。なるほど、たしかにノギツネは、なにかをつかまえようとしています。でも、いったい、なにをつかまえようというのでしょうか?
(……あら、ひょっとして?)
 そのとき、ノウサギは気づきました。
 見ると、池の水には、にじのはじっこがうつっていました。どうやらそのあたりを、ノギツネが、さっきからにらんでいるのです。ノウサギは、あきれたようにいいました。
「ばかねえ、そんなもの、つかまえられるわけないじゃない!」
「やってみなくちゃ、わからないだろ」ノギツネは、口をとがらせて、いいかえしました。「いいから、だまっててよ。ほんとうに、もうすこしで手がとどきそうなんだ――」
(まったく、子どもなんだから)ノウサギは思いました。(水に、うつったにじだってわからないのかしら?)
 そのあいだも、ノギツネは、とてもしんけんなようすで、水の上を見つめていました。ノウサギは、もういくことにしました。ふりむくと、きれいな鳥が、さあっと空へかけあがっていきます。ノウサギも、おいかけようとしました。
 そのときです。
「――やった、とった!」
 うしろで、ノギツネの声があがりました。
 ノウサギは、びっくりしてふりかえりました。すると、池のふちに、魚がぴちぴちとはねていました。ノギツネが、足でおさえています。
(なあんだ、にじじゃなくて、魚をねらっていたのね!)
 ノウサギは、はずかしいので、それはいわないことにしました。それから、ノギツネといっしょに、ぴょんぴょんとはねて、ふたりでよろこびました。

 




童話作家緒島英二さんより

 透明感のある世界が、確かな文章力の中に描かれています。ユーモラスなラストも、作品をしっかりしめくくっています。

 

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