読者投稿オリジナル童話

おばあちゃんの草もち

ペンネーム みさとわこ(柏市 学校司書 40代)

 

 春休みの楽しみは、お墓参りでおばあちゃんの家に行くこと。おばあちゃんの家にはいとこのさやかちゃんがいる。
 わたしは片山みちる。四月から六年生になる。いとこのさやかちゃんは二つ年上だ。さやかちゃんのお父さんとわたしのお母さんは兄妹で、さやかちゃん一家はおばあちゃんと一緒に住んでいる。
「さやかちゃん、こんにちは。あ、髪切ったの? 似合う」「うん。ちょっとイメチェン。ねえ、みちるちゃん、お散歩行こう」
 わたしたちの散歩コースは土手と決まっている。おばあちゃんの家は田んぼに囲まれていて、少し歩くと大きな川がある。小さいころからその土手で段ボールですべったり、四つ葉のクローバーを探したりして遊んでいた。
 土手に上がると、一面にきみどり色の草地が広がっていた。川はゆったりと流れている。
「いつ見てもいい眺めだね。風が気持ちいい。あ、タンポポがいっぱい」
「ね? 春が来たーって感じでしょ?」
  しばらく二人で歩いていると、おばあちゃんの料理の話題になった。
「みちるちゃん、覚えてる? おばあちゃんの甘いちらしずし」「うん。あれ好きだった。さやかちゃんと一緒にお手伝いしたよね。酢飯をうちわであおいで」
「そうそう。お酢でむせるんだよね。でも、最近ね、おばあちゃん、台所に立たなくなっちゃったんだ」
「そうなんだ。わたし、おばあちゃんの草もちも好きだったな」
 おばあちゃんの草もちは、きれいな緑色で春の香りがした。中にあんこは入れずに、甘みと塩気のきいたきな粉をたっぷりかけて食べるのだ。
「ねえ、さやかちゃん。あの草もちってどうやって作ってたのかな?」
「草はヨモギだよ。ほら、そこにも生えてるでしょ」
 さやかちゃんはしゃがんで小さな草をつまんでみせた。
「これをゆでてすりつぶしたのをお餅に混ぜ込むの」
「つんで帰ったら、草もち作れるかな?」
「いいね! 草もちならおばあちゃんも一緒に作ってくれるかもしれない」
 台所に立つおばあちゃんの姿が頭に浮かんだ。
「わたし、理科は苦手なんだよね。もう一回教えて。どれがヨモギだっけ?」「葉っぱがギザギザしてて、裏が白っぽいのがそう。若い葉っぱだけつんでね」
「これで合ってる?」
「正解! においもかいでごらん」
「うわ! 草っぽい。でも、たしかにこの香りだった」
 わたしたちは顔を見合わせて笑った。

 




童話作家緒島英二さんより

少女2人の、さわやかな心の交流が胸に残ります。おばあちゃんの草もちを通して、甘酸っぱい思春期を感じました。

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