読者投稿オリジナル童話

カーブミラー

ペンネーム 池田 文(柏市 アルバイト・69歳)

 

 わしは、信号機のない交差点のカーブミラーだ。ここに立つようになってからずいぶん長くなる。その時は、ピカピカだったが、だいぶよごれてきた。それでも時々近所のおじさんが脚立を持ってきて、わしの顔をピカピカにみがいてくれるんだ。
 ここを通る車や人や自転車はかならず、わしをのぞきこんでいく。しかし一年ほど前に、いねむり運転の車が車にぶつかり二人がけがをして、救急車ではこばれていったことがある。わしは心の中で「あぶない!」とさけんだのだが、聞こえなかったようだ。
 三輪車にのった男の子とお母さんが近づいてきた。お母さんはていねいに、男の子におしえていた。
 「このかどは、かならず止まって、ゆっくり右と左を見て通るのよ」といいながら公園の方へ向かった。
 この前見たときは、ほじょりんをつけていた女の子が、今日はほじょりんをとったのか、少しフラフラしながら友だちのあとを追いかけていった。
 少し前までランドセルをしょっていたと思った男の子が、今朝はピカピカの自転車で学生服を着て近づいてきた。わしをのぞきこむと、左右をたしかめて渡っていった。そうか中学生になったんだな。「大きくなったなー」
 おや、反対側からは高校生のグループがやってきた。その中にも新しい自転車の子がいる。新一年生なんだな。きちんとわしの顔を見ながら左右をたしかめて通っていく。「気をつけてな」
 しかし、慣れてくると困ったものだなー。止まらない子や、スピードを出したまま通る子もいるんだよ。「ヤレヤレ」
 わしは毎日、一日中ヒヤヒヤやドキドキしながらここに立っているんだ。うっかりいねむりでもしたら、顔がくもってしまうと、見えにくくなり、事故がおこるかもしれないからな。
 人や車の多い朝や夕方は、とくにきんちょうするよ。夜になるとやっと静かになる。しかし、休んではいられないんだ。夜も仕事をしている人たちが通っていくからね。

 




童話作家緒島英二さんより

 カーブミラーを主人公に、人々の生活の様子がよく描かれています。いつまでも成長を見守っていてほしいですね。

 

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