読者投稿オリジナル童話

タンポポ女王のシャボン玉

佐々木 カツコ(鎌ケ谷市 無職・66歳)

 

 ミクちゃんは、もぐら原っぱで、ぴかぴか光る金貨を見つけた。近づいてみると、それは、たんぽぽの花だった。
「きれいだなあ。いっこほしいな」
ミクちゃんは、思わず手をのばした。「よいっしょ」とぬこうとしたけど、びくともしない。
「えっ、うそ。なんでぬけないの」
こんどは両手でおもいきり引っぱった。すると、どっしんとしりもちをついてしまった。
 その時、「うふふ」と笑い声がした。それは、土の中のもぐら君だった。
「ミクちゃん、ぼくが手伝ってあげるよ」
 もぐら君は、たんぽぽの根っこをおらないように、上手にほってくれた。
「ありがとう、もぐら君。たんぽぽの根っこってこんなに長いんだね。もぐら原っぱの土の中、いったいどうなってるの?」ミクちゃんが聞いた。もぐら君もこういった。「土の上、いったいどうなってるの?」
ミクちゃんともぐら君は、同時に答えた。
「すごいことになってるよ!」
 何日かたって、ミクちゃんは、なかよしのサラちゃんと、もぐら原っぱにやってきた。
 光がまぶしくて、二人の目は、だんだん細くなって、いっしゅんパチンと閉じた。そのとたん、クラクラクラ~と、もぐらの穴にすい込まれた。気がつくと二人は、土の中から原っぱを見ていた。
「ねえ、ミクちゃん、あれを見て!」
「なに? あっ、たんぽぽが歩いてる!」
 二人が見たのは、黄色の帽子がよくにあう、おしゃれなお姉さん、いや、タンポポの女王だった。タンポポ女王は、たんぽぽたちにやさしく何かをささやきかけている。二人は、耳を澄ませた。
「……あなたたち、今年も、もぐら原っぱで、よくぞ生きぬきました。小さいころは、白いお乳をあなたたちにあげた。あなたたちは、みるみる強く根をはった。冷たい冬は、ギザギザのロゼットの葉っぱでみをまもった。あなたたちは、もう、りっぱな一人前のタンポポです。さあ、風があるうちに、旅立ちましょう」
 タンポポ女王は、長い透明のストローで、ふわりふわりとシャボン玉を吹き始めた。
「シャボン玉、たんぽぽのシャボン玉!」
二人は、うれしくなって、穴から飛び出した。もぐら君が顔を出した。シャボン玉が鼻にさわって、ぱちんとはじけた。そのとたん、たんぽぽの黄色が、もぐら君の目に、わっととび込んできた。もぐら君は思った。
(ほんとだ。マジすごいことになってる!)
 きれいな大きなシャボン玉が、ゆっくりと空に上がっていく。タンポポ女王のシャボン玉かな……。二人と一ぴきは、ならんで空を見上げた。
「ミクちゃん、サラちゃん、もぐら君、さようなら。また来年あいましょう」
不思議な声が、こだまのように聞こえた。

 




童話作家緒島英二さんより

 ミクちゃんとサラちゃん、もぐら君の温もりあるやりとりが素敵ですね。良質なファンタジックな世界が広がります。

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