読者投稿オリジナル童話

ピンク色の足あと

じんしょう(流山市 自由業・43歳)

 

 またまた、おてんばなノウサギです。
 白い冬毛も、すっかりもとの茶色にもどり、なんだかからだもかるくなって、じっとしていられないようなきぶんでした。
 まあ、おてんばなノウサギのこと、いつでも、じっとなんかしていませんけど。
 「きょうは、里のほうへいこうかしら」
 ノウサギは、ぴょんぴょんとはねて、草のあいだをすすんでいきました。
 ところが、ちょうど、土のじめんがひらけると、ノウサギはびっくりして、おもわず立ちどまりました。そこには、てんてんと、足あとがありました。なんと、ピンク色の足あとです!
 「ちょっと、こんなことって、ある?」
 その足あとは、まるで、シカのひづめのようなかたちでした。ですが、ずっと小さくて、ノウサギの足あとと、おなじくらいなのです。なにより、色が、きれいなピンク色でした。いったい、どんなどうぶつが、こんな足あとをじめんにのこしていったのでしょうか。
 「からだが、ピンク色をしているのよ」
 ノウサギは、かんがえました。
 「それで、足あとも、ピンク色なんだわ。でも、そんなどうぶつっていたかしら。もしかすると、ユニコーンみたいに、めったに見られない、ふしぎなどうぶつなのかも?」
 ノウサギは、わくわくしながら、さっそく、足あとをおっていくことにしました。ピンク色の足あとは、いろんなところに、あっちこっちについています。
 たとえば、土のじめんだったり、石の上にも、足あとがついていました。とおもえば、なんと、木のみきや、えだのところまで、てんてんとついているのですから。
 「わたしも、けっこう、おてんばだけど」
 ノウサギは、あきれていいました。「この子もそうとうな、おてんばな子だこと!」
 里へちかづくにつれ、足あとは、ますますおおくなっていきました。この、ふしぎなどうぶつは、里のほうで、かわれているのでしょうか。
 大きなやしきがあって、高いかきねが、ぐるりとかこんでいました。それを、まわりこむようにすすんでいくと、かどをまがったところで、ノウサギは目をひらきました。
 「あっ、すごい、ピンク色がいっぱい!」
 ――そこには、まんかいの、さくらの木が立っていました。
 そう、ピンク色の足あとは、一まい一まいの、さくらの花びらだったのです。
 風がふいて、ちった花びらが、あたりにおちていきました。それが、まるで足あとのようで、すっかり、まちがえてしまったというわけなんです。
 では、ノウサギも、ずいぶんがっかりしたことでしょう、ですって?
 いいえ、きれいなさくらを見つけると、そんなことすっかりわすれて、うれしそうに、ぴょんぴょんとびはねていましたよ。

 




童話作家緒島英二さんより

 元気なノウサギの姿に、心が躍ります。桜の花びらの景色が目に浮かび、明日への力が湧いてきます。

 

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