読者投稿オリジナル童話

クモの糸

小野 功(我孫子市 無職・76歳)

 

  勇治は学校から帰ると下駄箱上のおじいちゃんが育てている植木鉢の小さな花にクモが巣を作っているのに気が付いた。それほど大きくないクモだったが、落ちていた小枝で巣をこわした。
 宿題を終え、夕食も大好きなカレーライスだったので満腹になる程食べ、眠くなったので自室に入ってベットにもぐった。
 寝入ってしばらくすると耳もとで「勇治君ちょっと起きておくれじゃないか」と低い声の男の声がした。
 勇治はフトンのはじを握って周りを見た。
 見なれない帽子をかぶった老人がすわっていた。「おじさんが見せたい物あるからおじさんと一緒に来ておくれじゃないか」勇治は何かふわふわした気分で起き、パジャマのまま老人のあとについて部屋を出た。部屋の前は真っ暗闇で勇治がそっと足を踏み出したとたんに穴の中へ落ちる様にスーッと下へ落ちていった。声を上げようとしたが、出なかった。
 やがて気が付くとハンモックに寝かされ身体には細い透き通った糸がグルグルに巻かれていた。すると、のそりと大きなクモが現れた。
 「わしはクモの権助という。キミは今日、わしの巣をこわした。これからわしはキミを成敗してくれる」と、その時、遠くから「オイ、チョット待て、おれがこの子にあやまる気持ちがあるかどうか聞くから、それから成敗すれば良い、どうだ」ゆっくり現れたのはクモ一族首領の鬼クモのクモ太郎であった。
 クモ太郎は、大きな姿を勇治の近くに見せながら「君は権助の巣をこわしたことを悪いことだと思っているかネ」「ハイ、悪い事をしたと思います」「それで、これからは二度とそういう事をしないと誓えるかネ」「ハイ、誓います」
 クモ太郎は「オイ、権助よ、この子の目は正直に誓ってウソはない。俺は許して上げるべきと思うが、どうだ」「首領がそう言うのであれば勘弁するが、これからも同じことをしない約束をしてほしいな」
 クモ太郎は「勇治君、権助は許してくれると言っているが、これからのこともあるので君の家のどこかにわし達の仲間が巣を張って悪さを二度としないか見る事にするがいいかね」勇治は「ハイ、分りました」と返事をした。
 一瞬、暗くなり、気が付くと布団の中であった。「遅刻するわよ」と母の声で起きた。
 顔を洗いに洗面所に立つと天井のすみに小さいクモの巣が張っていた。

 




童話作家緒島英二さんより

 ファンタジックな世界の中に、小さな生命の息づかいを感じる作品です。物語の展開が面白いですね。

 

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