読者投稿オリジナル童話

お日さまの見張り番

村松 貴子(柏市 主婦・42歳)

 


日ぐれどき、「そろそろ仕事はおわりかね」イルカ君が言う。
そうしようか、とぼくも動くのを止めた。ぼくらは日に当たると勝手に動くおもちゃ、ソーラートイという名前らしい。ぼくはパンダ型で、あいぼう君はイルカ型だ。
毎日まいにち、窓辺でカタカタ揺れている。
シュンタいわく「育てているトマトにちゃんと日が当たっているか確かめる」役目があるのだそうだ。
シュンタというのはぼくらのうちにいる小学2年生。下に3歳の弟がいる。
しばらく雨つづきでのんびりできたけど、さいきんのカンカン照りにはグッタリしてしまう。そこらへんイルカ君は気にしてないらしい。このうちに来て早々に、今より小さかったシュンタに激しく揺さぶられ、あっという間に動けなくなったブタ君よりはマシなんだそうだ。確かにね。きのどくな話だ。ぼくたちのような繊細なおもちゃにとって、やんちゃな男の子は恐怖の存在だ。
それでもシュンタはブタ君のことで反省したのか、ぼくらには割と丁寧に接してくれる。
ある日、いつものようにトマトの日当たりの見張りをしていると、3歳の弟が幼稚園から帰ってきて、シュンタがいないのをいいことに、ぼくを持ち上げ、あろうことかぼくを力いっぱい揺さぶった。いけない! そう思った瞬間、ぼくは動けなくなってしまった。
ブタくーん!! ぼくもやられちゃったよー!
イルカ君を見ると、必死にカタカタ動いている。ぼくと同じ目にあわないよう、心の中で祈っているようだ。
そこへシュンタが学校から帰ってきた。
力なく止まったままのぼくを見て「ふーん」とつぶやいている。(弟はシュンタの足音を聞いて、とっくに逃げ出した)
ブタ君のように捨てられちゃうのかな。シュンタが手をのばしてきたとき、ぼくは固く目をつぶった。
「ふーん」シュンタはもう一度つぶやいた。
「軸がズレちゃったのかなぁ」
カチャカチャとぼくの足元を直すと、縁側のトマトの隣にそっと置いた。
カタカタカタ……動いた!
シュンタは満足そうな笑みを浮かべ、宿題をやりにリビングへと向かった。途中、弟のほっぺをつねるのも忘れない。
カタカタカタ。ぼくは動ける喜びを心から感じていた。
日がのぼってはまた沈むのをくり返すかぎり、ぼくらはいつまでもお日さまの見張り番をしてやろう。シュンタのトマトは少しずつ色づいてきた。暑い夏はまだまだ続く。

 




童話作家緒島英二さんより

 シュンタが生き生きと描けていますね。ソーラートイたちも大変そうですが、楽しそうでよかったです。

 

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