読者投稿オリジナル童話

ベビーバスさん

こばやし まさこ(柏市 主婦・75歳)

 


 
 わたしはベビーバスです。この家に生まれた女の子の赤ちゃんのために用意されたピンク色のベビーバスです。
 いちばん最初、わたしはそらちゃんのベビーバスでした。そらちゃんは泣いてばかりの赤ちゃんでした。おふろのときもずうっと泣きっぱなしなので、わたしはやさしくやさしく、さざ波を立てて、そらちゃんのからだを包み込んであやしたりしたものです。
 そらちゃんが三さいを過ぎた頃、わたしはみみちゃんのベビーバスになりました。みみちゃんは大人しい女の赤ちゃんでした。おふろが大好きで、いつもお口をすぼめて気持ちよさそうにしていました。おふろで泣いたことは一度もありませんでしたから、わたしは思うぞんぶん、みみちゃんをだきしめることができました。
 みみちゃんが二さいになって間もなく、わたしはこの家の三人目の女の子、きいちゃんのベビーバスになりました。
 きいちゃんは、二人のおねえちゃん達とは大ちがい。男の子みたいに元気で、手足を大きくつっぱってお湯をはじいていました。 わたしがうっかり、いねむりでもしようものなら、どん! とけとばされてびっくりするなんてことは度々でした。しょうじき言ってこわかったです。
 ある日わたしは、ママにていねいにタオルでふかれると、ロフトに連れて行かれました。
 それから、バーベキューセットやおひなさまそしてせんぷうきたちに「おかえりなさい」を言われると、前と同じようにロフトの決まった場所に落ち着きました。
 (多分、わたしはずうっと、ここにこうしているんだろうな)と思っていたある日のことでした。のっしのっしと、はしごをのぼってくるパパの足音がして、「ベビーバスさん、出番だ! もうひと働きお願いしますよ」と言われ、なつかしい一階のリビングに連れて来られました。
 そして、うれしいことにこの家の女の子たちに、久しぶりに会うことができたのです。
 そらちゃんは七さい、みみちゃんは四さい、きいちゃんは二さいにもなっていました。三人共わたしをとり合いしながら、かわるがわる中に入っては、大はしゃぎでした。
 ところで、(こんどはだれのベビーバスになるのかなぁ……)と、わたしは楽しみと不安な思いとでドキドキしていました。
 それからすぐにわかりました。な、な、なんと! わたしはこの家の新しい家族、パピヨンという犬種の赤ちゃんイヌのベビーバスになったのです。イヌの名前はさくらちゃんでした。ええ、もちろん女の子です。
 というわけで、わたくしはさくらちゃんのベビーバスとして、まだまだがんばることができそうです。
 これからも、よろしくね、よろしくね!!

童話作家緒島英二さんより
 ベビーバスを主人公に、楽しいお話ができました。家族の明るさや温かみが伝わってくる作品です。ラストのまとめもいいですね。

 




緒島英二より

 今回の講評はお休みです

 

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