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朝日新聞柏支局長のコラム

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マスクと夏

我孫子市の定例会見に出ようと6月末、市役所に赴くと、小学生たちが庁舎に向かう坂道を上っていた。気温は30度超。社会科見学だな。そう思って見やるとハッとした。マスクをしていなかった。「着けなくていいの? 周りに怒られないのかな」と思った。
流山市の児童12人が熱中症で搬送されたばかり。国はコロナ禍の熱中症対策として、屋外ではマスクを外そうと呼びかけ始めた。不着用の理由は理解していたつもり。だが最近は見ない風景で「駄目じゃん」の意識が底にあった。そう思いながら会見の席についた。
前に座る星野順一郎市長は、市の広報紙で子どもたちの屋外活動におけるマスク不着用に理解を求めるコメントを載せたばかり。趣旨を問われ「熱中症になっては、何のためのマスクなのか分からなくなる。オンオフが必要な時期だ」。載せたのは、大人が叱るのを防ぐ狙い。学校にも通知したという。黙々と坂道を上る児童の姿と重なった。
ハッとした自分を反省し今、猛暑の日に外を歩く際にマスクは左手で握る。両腕は大きく振る。「マスクは持っていますよ」と言わんばかり。歩幅は自然と広くなる。すると、わずかだが同様のそぶりの人とすれ違う。一人は目をそらし、一人は目礼してくれた。

朝日新聞柏支局長 斎藤茂洋

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