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ギンガムチェックの夢

関口 麻里子(柏市 主婦・55歳)

 

  私は大学もアルバイトもお休みの日曜日の午前中、ママに言われた。
「ゆみ、これから、じーじとばーばのお家へ行ってきてもらえるかな」「いいけど、どうして」
「じーじがいらなくなった本を整理したから、ゆみがアルバイトをしているショッピングセンターで、買い取ってもらいたいんだって。さっき、電話があったのよ」
「わかったよ、いいよ」
 私は車で五分のじーじとばーばの家へ行った。やがて、お庭のある白いお家が見えた。
『ピンポーン、ピンポーン』
インターホンを押すと、すぐに声がした。
「ゆみちゃんだね」「そうだよ、ばーば、おはよう」
 家の中に入ると玄関には、本がぎっしり入った二つの手さげ紙袋があった。「お休みなのにごめんね。お願いね」ばーばは赤いギンガムチェックのエプロンをして、ほほえんでいた。「うん、大丈夫、行ってくるね」
 車に二つの紙袋をのせてたら、見えている宇宙の本を見て、私の小さな頃を思いだした。
(じーじ、ゆみちゃん本買ってきたよって、私が小さい頃よくプレゼントしてくれてた)
 そして、車でショッピングセンターへ行き、本屋さんで二つの紙袋の中の本を、店員さんに見てもらった。
 しばらくして、店員さんによばれた。「千五百円になります。よろしいですか」「はい、大丈夫です」
 私は、お金を受け取って本屋さんをでて、お気に入りの洋服屋さんの前を通ると、黄色いギンガムチェックのブラウスが目に入った。
(ゆみちゃんは黄色がよく似合うねって、ばーば、私が小さい頃よくそう言って、黄色い洋服をプレゼントしてくれてた)ばーばが買ってきてくれた洋服は、すぐお気に入りになって、いっぱい着たから古くなり捨ててしまった。
(着てみて、サイズが合うなら買おう)ギンガムチェックのブラウスを、試着室で着ると、サイズが合ったので買った。
「ありがとうございます」
 店員さんから洋服を受け取ると、心がうきうきした。私は、お土産に和菓子を三つ買った。
 帰りの車の中で、じーじとばーばのことをいっぱい思っていた。(じーじとばーば、今度いっしょにショッピングセンターへ行こう。じーじ、写真の多い本を買いに行こう。ばーば、赤が似合うから、赤い洋服を買いに行こう。今度は私から夢をお返ししたいって言おう)
 私は、じーじとばーばに、とっても早く会いたかった。

 

童話作家緒島英二さんより

つい忘れがちになってしまう、家族の温もりが、ジワッと染み出してきます。素敵な夢のお返しを祈ります。

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