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朝日新聞柏支局長のコラム

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地取りへ走る

 

 「知らないなぁ。つきあい、なかったもの」。柏市高柳で昨年12月に夫婦が殺害、放火もされた事件で、現場に駆け付けた。被害者らの人物像を聞く私に、住民の一人はぼそりとこう話した。
 夫婦は近所づきあいが少なかったのか、悲惨な事件のためなのか、みんな口が重かった。一方で、規制線を守る警官や住民に気さくに声をかけ笑顔で応じてもらっている他社の記者も目にした。「うまく話が聞けていない」。私は焦りを抱えながら日暮れまで、住民を見かけては声をかけた。一部住民から夫婦の人柄に触れる話を聞き、記事にした。
 事件や事故の際は、いち早く現場に駆け付け、被害者と容疑者の人物像、関係性を聞いて回る「地取り」をする。当局の公式発表を前に真相に迫るためだ。私はいつもリュックにパソコンや一眼レフカメラなどの取材道具一式を詰め込み、持ち歩いている。
 地取りは、大きな事件や事故の場合にすることが多い。初対面の人に声をかける。けげんな顔をされたりもするが、事件や事故の背景を聞くことも出来る貴重な機会で、避けては通れない。
 非常時でも警官や住民の懐にすんなりと入れるようにならないか。これからも知恵を絞りたい。

朝日新聞柏支局長 斎藤茂洋

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