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不思議の森のかくれんぼ

山田 よしみつ (流山市 無職・90歳)

 

 夏休みになって山奥の森に住むおじいちゃんの山小屋に遊びに来たマサシとさとしの兄弟。
 一晩寝て起きると、
「ああ、この山なにもない、ゲームもできない」
「おじいちゃん、もう、町にかえる…⋮」とぐちばかりこぼした。するとおじいちゃんはいきなり、森に向かって、「おーい森の子どもたち、孫たちが森はつまらないといっているぞ、いっしょに遊んでやってくれー」と叫んだ。しばらくすると風に乗って木の葉の形をした不思議な手紙が小屋に届いた。
 【明日かくれんぼの会をします。オニになってください。森の子達を見つけたら森の宝物をあげます。森の子ども会】
 次の朝『かっこう』の声が三つ聞こえた。始めの合図だ。二人はおそろいのリュックを背負って元気よく森へ向かった。でも、森全体が黒い怪物のようで怖い。
 二人が迷っているとおじいちゃんは「森は怖そうだが本当はやさしい。元気を出せ、耳と眼を使え、いざとなったらリュックの秘密兵器を使え」
「わかった」二人は大きく息を吸って、暗い森の道を歩き出した。気がつくとこの森の空気はいい香りがする。とてもおいしい。「もう、怖くないね、さとし」「うん、ちっとも」笑顔が戻る。背負ったリュックの中にあったラジカセのスイッチを押した。しずかな音楽といっしょに山や森の歌も流れた。
 すると森に朝の光が差してきた。近くで小鳥たちの歌が聞こえる。音にあわせて山百合の花がゆれている。木の枝がリズムをとって鳴っているようだ。
 笹原をよく見ると音にあわせて長いウサギの耳がゆれている。「うさぎさん見っけた」。木の影から小鹿の尻尾も見えた。木の上で子リスが巣穴から首を出した。なんだか仲良しの友達にあったような感じで笑っている。
 きつねの子も狸の子も、…⋮この森の動物たちは歌がすきなのだろうか。動物たちが二人の周りに集まってくる。
 するとどこからか、「こらっ森の子どもたち、ちゃんと隠れていろ」大きな声が響いた。でも笑い声が混じっている。これがおじいちゃんから聞いた樹齢200年のヤマモモの大木、森の精だ。
「森の子どもたちを、みんな見つけましたよ」
「ああ、よくがんばった。さあ、これが褒美だ。みんな持ってけ」大木が枝をゆすると、よく熟れたヤマモモの実が大雨が降るように落ちてきた。二人のリュックいっぱいに森の宝「ヤマモモ」をもらっておじいちゃんの山小屋に帰った。

 

童話作家緒島英二さんより

 登場人物がとても生き生きと描かれ、物語の世界へと誘われます。宝物はきっと、ヤマモモとひと夏の楽しい思い出なのでしょう。

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