朝日新聞柏支局長のコラム
パレード
「あぁ、びっしり」。柏市ゆかりの豊昇龍関の横綱昇進祝賀パレードが2月16日に行われた。撮影場所で脚立に上ると、人が続々とやってくるのが見えた。
「通路に立ち止まらないでください」と警官の声が響く。沿道いっぱいにひしめき合う見物客の合間から、豊昇龍関が人力車に乗って現れた。満面の笑みで手を振る姿に、場の雰囲気は一気に和やかになった。私はシャッターを切り続けた。
その後の定例会見で太田和美市長に総括を問うと、「柏は相撲の街と言われるようになってきた。市民のアイデンティティー醸成につながったのではないか」と話した。
2023年8月、大関昇進を決め市役所を表敬訪問した豊昇龍関に「横綱になったらパレードを」と持ちかけたのは、市長の方だった。パレード実施の実績は、聞いたことがない。私は「市長、そんなこと言っていいの」と思いながら、そのまま記事にした。
政治家が公の場で具体的な方針を口にした時、それは「公約」となる。先輩にこう教えられ、必ず書き留める習慣を身につけてきた。こうやって政治家と記者の間に緊張感が生まれる。公約を果たせるか否か。どんな小さな会話でも、私の関心はそこにある。
朝日新聞柏支局長 斎藤茂洋