朝日新聞柏支局長のコラム
挑戦する梨羅
8月のパリ五輪で、重量挙げ女子49キロ級に出場した鈴木梨羅選手を応援するイベントが出身地の白井市であった。競技は、日本記録更新によるメダル獲得を狙ったが失敗、8位に終わった。中継を見守った市民の中には、目頭を押さえる人の姿もあった。
そんな中、中学の剣道部仲間だった看護師は「昔から変わらず挑戦する姿は梨羅らしい」と話し、晴れやかな表情を見せた。小柄な鈴木選手は団体戦でいつも先鋒を務め、果敢に攻めたという。当時と今の姿が重なった。「また、パワーをもらいました」と続けた。
北海道生まれの私は中学時代、雪上を走るスキー競技のクロスカントリー部に入っていた。高校の「帰宅部」を経て浪人生活を送る中、先輩が冬季五輪に出場した。「今も挑戦しているのか」。結果が載る新聞紙を握りしめた。
先輩は、今も競技の指導者をしているようだ。交流はないが、動向は報道で知ったり、知人に聞いたり。知らせに触れるたび、今も私に「もう少し、がんばろうかな」と思わせてくれる。
書いた鈴木選手の記事は先輩と同様、行数の短い「短信」だったけど、載った新聞紙を握りしめる人がいるだろう。今後も伝え続けたい。
朝日新聞柏支局長 斎藤茂洋