朝日新聞柏支局長のコラム
コウノトリ誕生
コウノトリが、野田市のコウノトリ飼育施設前にある電柱上で産卵したが市は内密にと言っている――。話を聞いた3月、駆け付けた。親鳥が巣台でじっとしている。偶然出会った市の担当者に聞くと「そうです」 。そして「見に来た人に『静かに見守って』と呼びかけています」と続けた。
駐車場近くで営巣していた。初の産卵で人がびっくりさせないよう孵化までは静かにということ。三脚使用の撮影は「後方で」とお願いの看板も立っていた。同じ東葛地域の住民として「お安いご用」と後ろに下がった。
巣は地上10㍍にあり、お菓子かごのような形。ひなは生まれてもすぐに撮影できない。抱卵や食事に出る姿を日暮れまで撮り続けた4月中旬、親は立ち上がって足元を見つめたり口を大きく開けたりした。
写真をよく見ると、何かをはき出していた。調べると実績のある他市は、抱卵をやめえさやりが確認できると孵化と判断することが分かった。勇んで担当者にぶつけると「私たちも生まれたと判断した」とさらり。ひなが大きくなった4月末、記事にした。
「内密に」「静かに」とはSNSでの発信も含んでいた。市の正式発表まで、発信した人は、ほぼなかったようだ。静かに見守った観察者たちをたたえたい。
朝日新聞柏支局長 斎藤茂洋