朝日新聞柏支局長のコラム
再発防止
野田市の鈴木有市長は風呂に入り、シャワーの先から出る冷水に触れるたび、虐待死した女児、栗原心愛(みあ)さんを思い出す。事件直前の学校訪問では会話もしていた。「先生に促され、私に質問をしてくれました」。事件再発防止へのインタビューで、市長はこう話し目を潤ませた。
心愛さんは2019年1月24日の夜、自宅の風呂場で父親から冷水のシャワーを浴びせられ続けた後、死亡した。教師に発したSOSも届いていなかった。裁判所は、逮捕、起訴された父親から虐待を受け続けていたと認定した。間もなく5年、命日を迎える。
市は、対応する職員を5人ほどから30人に増員した。市民の意識も高まり、通報の数は増加している。だが、虐待を「しつけ」と言い張る保護者は依然として多いという。一方、傾向を分析すると、核家族よりも3世代世帯の方が通報は少ない。おじいちゃん、おばあちゃんが、かばうためだという。
市役所に気兼ねなく連絡してもらえるよう、市職員たちは、来庁した市民に積極的に声をかけるよう心がけているという。
防止策に妙案がない中、子どもの保護に結びついた通報例もあるという。人とのつながりをつくり、地道に保護につなげてほしい。
朝日新聞柏支局長 斎藤茂洋