朝日新聞柏支局長のコラム
続く人口増
「つくばエクスプレス(TX)の駅がある北部の人口が大幅に増えている。これはTXがあるからと考えてもよいか」。10月発表の柏市人口推計に要因の記載はないので、担当者に聞くと否定しない。なるほどと「TX効果で市の人口押し上げ」と記事にした。
推計の見直しは聞いていたし、人口のピークが後ろ倒しになるだろうとは想像していた。だが、手にした新推計はピークが以前の2025年から35年になり人口も1万2千人も上乗せ。「そんなにすごいのか」と声を上げそうになった。
北海道を走るJR函館線のある駅前に生まれた。家業は駅利用者を見込んだ「小間物屋」。貨物列車で運ばれてきた商品を親と一緒に駅に取りに行ったこともあった。そんな実家は大学進学後、廃業した。故郷は過疎への道をたどる。
柏駅の改札を出て歩くと行き交う人と肩がぶつかりそうになる。人口減の我孫子市や野田市も地価が上昇したり住宅の広告が目を引いたりで減少幅は緩やか。地方勤務が長い私は「同じ駅があっても減る街がある。なぜこんなに違うのか」と街がまぶしく見える。
日本全体の人口が減る。首都圏に人が集まる。柏では新たな産業を生もうと研究施設も集約される。目を見張るばかりだ。
朝日新聞柏支局長 斎藤茂洋