朝日新聞柏支局長のコラム
豊昇龍への質問
大相撲名古屋場所で優勝した柏市ゆかりの豊昇龍は、「市民の声援をどう受け止めているか」との私の問いに目を丸くして、きょとんとした。慌てて、「応援は力になっていますか」と続け、答えは「はい」。
8月1日に豊昇龍が市役所を表敬訪問した時のことだ。モンゴル・ウランバートル出身で、市内の日体大柏高校に留学した。大関昇進を決めた彼は、太田和美市長を前に「柏は日本のふるさと」と述べた。私はこの言葉に反応し、柏市民の皆さんへの言葉を引き出したかっただけなのだ。最初から率直な言葉で問いかければ良かった。
日ごろの記者会見では、相手に意図が伝わるよう、具体的で端的に質問するように心がける。ぼやけていると「何を聞きたいのか」とけげんな顔をされ、答えもぼやけることは多い。時には嫌がることも聞く。真っ先に手を上げたい。何をどう質問しようか。いつも緊張する。
豊昇龍の得意技は、右四つ、寄り、投げ。どんなタイプの相手にも対応できる多彩さと切れ味が彼の強みと言えそうだ。表敬訪問の席でも、次は横綱を目指すと表明した。9月に始まる秋場所に向け、気合を入れていることだろう。私も日々の質問の技を磨かねばと改めて思った。
朝日新聞柏支局長 斎藤茂洋