朝日新聞柏支局長のコラム
贈り主の正体は?
「チャリン」―。日曜日だった昨年12月25日の朝、自宅で過ごしていると、携帯電話からメールの着信音がした。「我孫子市からだ。事件でも起きたか」。見ると、広報文の件名は「伊達直人さんからランドセル5個が届きました」。えっ。私は目が覚めた。
広報文は、漫画・アニメ「タイガーマスク」の主人公を名乗る「沢山の伊達直人」から同日の明け方、ランドセルがクリスマスプレゼントとして庁舎前に置かれるのを守衛が見つけたとの内容。12年連続という。
同様の寄付は十数年前に各地であり、最近、聞かれなくなった。こんな記事は昨春まで6年いた神奈川県で読んだことも書いたこともなかった。「続けている人が千葉にはいるんだ」。うれしくなり記事にした。
贈り主は誰なのか。始めた理由は何なのか。ランドセルは高額で続けるのは大変そう。複数人がお金を出しているのかな。考えるほど、正体を知りたくなる。
事件や事故の際、関係者捜しをすることは、たびたびある。時に他社より早くたどり着き、書いた記事が注目されることがある。捜したい衝動に駆られる。でも、アニメ版の伊達直人はタイガーマスクと知られた最終回、ちびっ子の前から姿を消したっけ。静かに見守った方が良さそうかな。
朝日新聞柏支局長 斎藤茂洋