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朝日新聞柏支局長のコラム

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コウノトリの巣立ち

 「親鳥は、くちばしをカタカタと強く打ち鳴らしました。威嚇です」。野田市こうのとりの里で生まれた幼鳥が8月5日に飛び立ち、職員に6日、その後の様子を聞き「えっ」と思った。職員によると、親鳥はこの日の日暮れ、幼鳥が施設に舞い戻ってくると追い払う行動を見せたという。
 親鳥ペアは仲が良く、父は率先して巣作りをした。この巣で5月、ひなが生まれた。職員は「男親ががんばっている」と話し、ひなは順調に育った。出向いた施設の前に立ち、仲良き家族からの旅立ちになるのかな、と思い描いていた。
 施設によると、幼鳥は、約5㌔と成鳥並みの大きさ。親鳥と、争うようにえさを食べる様子もあった。親鳥ペアは、飛び立った幼鳥を「もう別の個体」と認識し、夫婦の生活に切り替えていた。くちばしを強くたたいて鳴らすのは「クラッタリング」という。
 約35年前の高校卒業時、隣のクラスの生徒は国立大が不合格になり、就職した。進学すると思っていた同級生は自動車整備工への道に進んだ。家庭の事情だと後で人づてに聞いた。自分は浪人の末、進学した。
 幼鳥と自分を重ねる。あの時、退路を断っていれば違う人生があったのか。顔を思い出そうとする同級生らは、制服姿のままだ。

朝日新聞柏支局長 斎藤茂洋

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