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朝日新聞柏支局長のコラム

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会 話

 どうしたらいいのかわからない絶望感は、昨日のことのように思い出す。英語が話せないまま米国の小学校に転校した初日、教師が身ぶりを交えて何かを繰り返し聞いてくるが、ヒントすらつかめない。実際は数分間だったと思うが、「あなたの名前は?」だと気づくのに、30分くらいかかったように感じた。
 会話が成立することの大切さは、外国語だけではない。資格試験のため10年以上も猛勉強し、他の人と交流する時間がとれなかった人がいた。猛勉強が終わり、相談することがあって担当窓口を訪れた。本人はいつも通りの感覚なのだが、担当者は何を言われているのかよくわからない。「会話のキャッチボール」ができなくなったためだと、専門家が取材で教えてくれた。
 国内の新型コロナウイルスの感染者数が落ち着きを見せたと思ったら、オミクロン株が出てきた。コロナ感染者が再び増え始め、まん延防止等重点措置も適用された。人と人との交流が、また危機に立たされようとしている。
 昔と違ってSNSもあるし、オンラインでグループ形式の会話もできる。ただ、会って話さないと、大切なことが伝わらないと感じることも増えた。コロナ禍で生活スタイルに数々の変化が起きたが、気軽に会って話す生活だけは奪われたくない。

朝日新聞柏支局長 石原剛文

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