朝日新聞柏支局長のコラム
独自大会
ここ数年、会社の中でサポート作業をすることはあったが、夏の高校野球を球場で久しぶりに取材した。最後に球児たちの熱い戦いを記事にした神奈川大会は、もう20年以上も前のことだ。
今年は新型コロナウイルス感染拡大で春の選抜高校野球大会に続き、夏の全国高校野球選手権大会も中止になった。目標に向かって努力を続けてきた球児たちは落胆した。球児たちの練習量や情熱とは比べものにならないが、筆者も努力を続けた目標を突然失い、混乱した経験が何度かある。球児たちに心をリセットしてもらいたいと心配だったが、千葉県での独自大会開催が決まり、少しほっとした。
取材当日、野田市の球場の日差しは強く、パソコンの画面がよく見えないほど。コロナ対策で観客席の入場者は制限されていたが、グラウンドでプレーする柏市や野田市の高校生たちの迫力あるプレーは昔のまま。最高のプレーを見逃すまいと、一瞬たりとも気が抜けない緊張感が戻ってきた。
試合後の選手への取材は、普段と違って離れた位置から質問した。泥だらけのユニホームで応じてくれた3年生は、守備のミスを帳消しにする豪快な逆転打を放った。チームは惜敗したが、「打撃はすべて出し切りました」とさわやかだった。コロナで心がどんよりとしていた筆者にも、元気がもらえた気がした。
朝日新聞柏支局長 石原剛文