朝日新聞柏支局長のコラム

　子どものころから運動が苦手で、数あるスポーツの中でも、特にサッカーの知識は皆無に近かった。サッカー人気が伸び悩んでいた米国で、子ども時代を過ごした影響が大きい。当時通っていた歯科医院で、「有名な選手も通院しているんだよ」と名前を言われてもピンとこない。当時米国チームに所属していたオランダの英雄、ヨハン・クライフ選手のことだったのでは、と気付いたのはずいぶん年を重ねてからだ。
　そんなサッカーとは縁遠い生活だったが、前任地・川崎市では地元チームの川崎フロンターレを約3年半にわたり取材。2位どまりで「シルバーコレクター」と呼ばれていたチームのJ1初優勝も見ることができた。サッカーとの距離が近くなり、転勤先も柏レイソルが拠点の柏市となってうれしかった。
　「試合の日には、クラブカラーの黄色のウェアを着たサポーターで道が染まる」。そんな言葉を聞いてワクワクしたが、コロナ禍でJ1は中断。7月4日の再開試合は無観客だった。
　でも、スタジアムのスクリーンにはオンラインで応援するサポーターの姿が映し出され、熱い思いが伝わってきた。静かな会場で、選手が次々と大声で指示を出し合っているのが初めて聞こえた。生の声援が戻れば、選手のそうした闘志にますます火がつくだろう。今季の活躍が楽しみだ。

朝日新聞柏支局長　石原剛文