読者投稿オリジナル童話
おじいさんとかみなり
千 恵子 (柏市 主婦・69歳)
和菓子屋の「さくらや」は、おじいさんがひとりでやっているお店です。
ドッコイショ。どうやら明日からつゆ入りだな。水ようかんを始めようか」おじいさんは、腰をさすりながら寒天を用意しました。
やっぱり翌日は雨です。おじいさんが水ようかんを作って、ショーケースに並べると、まるであじさいが咲いたようです。一番のお客さんはお茶の先生です。「まあ、きれいね。その水ようかんをくださいな」
「はい、ありがとうございます」
おじいさんは腰を伸ばしました。それから次々とお客さんがきました。しばらくすると雨が強くなり、遠くで雷の音もしてきました。
お客さんがとだえたので、おじいさんは、いすに座り通りをながめていました。
その時、ゴロゴロズドーン。大きな音がして、
「ごめんよ」真っ赤なかたまりが入って来ました。もじゃもじゃ頭に赤い体、トラの皮のパンツをはいたかみなりです。
「い、いらっしゃい」おじいさんはショーケースの後ろに逃げました。かみなりは、ショーケースに近づくと、「ほほほー、どれが一番うまいかな?」よだれをながしました。
「はい、どれもおいしいですが、この水ようかんはのどごしがサイコウです」「のどごしとはなんだ」かみなりの目が光りました。
「それでしたら、おひとつお味見を…」
ふるえる手で水ようかんをかみなりの前にだしました。かみなりは口に入れると、
「小さすぎてわからん」と、おじいさんの顔に息を吹きかけました。
「はい、それでは」 おじいさんは、つぎに二個だしました。口に入れたかみなりが、首を振ったので、おじいさんは、トレーのまま出しました。かみなりはさっと口に入れると、にやりとしました。
「水ようかんはわかったぞ。ところで、となりの黄色いのはなんだ」「こちらはビワようかんです」
これもかみなりの口に入ってしまいました。
「ほほほー、これがあの黄色いビワか、それじゃとなりはどんな味かな」それからかみなりは、大福、すあま、など次々に食べてしまいました。
「ところで、かみなりさま。お代ですが…」 おじいさんがおそるおそる言うと、
「金はない」とかみなりはいばっています。
「代わりにへその佃煮をやろう。これは万病にきくくすりじゃ、ほら、口を開け」
かみなりは胸にぶら下げた巾着から、佃煮を出すと、おじいさんの口に入れました。
それから表に飛び出すと空に消えてしまいました。おじいさんが追いかけると、あらふしぎ、体が軽くなっていました。
童話作家緒島英二さんより
「さくらや」さんの様子が、手に取るように伝わってきます。ユーモラスな表現の中、二人の友情までも感じさせられました。