読者投稿オリジナル童話
ミコヤンのなかなおり
根岸 暢子(松戸市 助産師・60歳)
ミコヤンは、しょうがく2ねんせい。がっこうにいくときも、かえるときも、いつもなかよしのきいちゃん、よっちゃんといっしょです。
ところがある日。がっこうからかえるとちゅう、「すきなかしゅは、だれ?」というはなしになり、「ゴウくんがいいよね」というふたりにミコヤンは、「ゴウくんなんて、どこがいいの? あんまり、うたがじょうずじゃないし、あしもみじかいじゃん」といってしまったのです。
ふたりはひそひそと、ないしょばなしをはじめました。ミコヤンが、しらんかおをして、さっさとあるいていると、ふたりがミコヤンのわきをはしりぬけ、ふりむきざまに「ぜっこう」といって、そのまま、いってしまいました。
ミコヤンは、なきだしました。「ほんとうのことをいって、なにがわるいの? きいちゃん、よっちゃんのいじわる」
いえにつくと、ミコヤンは、きょうのできごとをおかあさんにはなしました。それをきいたおかあさんは、「ミコヤン、それはあなたがいけないわ。ひとはそれぞれ、『すきだ』とおもうところがちがうのよ。あした、ふたりにあやまっていらっしゃい」
おかあさんにいわれてはじめて、ミコヤンはじぶんのほうが、ふたりにいじわるなことをいってしまったことに、きがつきました。(そうだったのか。きいちゃんたち、おこっているだろうなあ。あした、ゆるしてくれるかな)
つぎの日、ミコヤンは、おもいあしどりで、ぎりぎりのじかんに、まちあわせのばしょにいきました。きいちゃんたちが、きてくれないのではないかとしんぱいしていましたが、ふたりはさきにきていました。
「きいちゃん、よっちゃん、おはよう。きのうはごめんね。わたしがいけなかったわ」
ふたりは、「べつにいいよ。わたしたちは、ゴウくんのダンスがかっこいいところがすきなんだから。こっちこそ『ぜっこう』なんていってごめんね」とニッコリしました。
さんにんは、なかなおりをして、もとどおり、なかよくがっこうにいきました。ミコヤンは、(ふたりにあやまって、よかったな。これからは、ともだちがいいとおもっていることは、「そうなんだね。どんなところがすきなの?」って、きいてあげることにしよう)と、こころからおもいました。
童話作家緒島英二さんより
お互いを認め合う三人の心の育ちが、朝日を浴びて、キラリと輝きだしました。