読者投稿オリジナル童話

　クバは、バクの子です。クバには、おじいさん、おばあさん、お父さん、お母さんと双子の妹がいます。クバのお家は、お城の中です。おじいさんが、王様の夢六臣をしています。クバは、お父さんお母さんが、小さな妹達のお世話で大変なので、いつもおじいさん、おばあさんといます。少しさみしい気持ちもありますが、お兄ちゃんなので我慢します。優しいおばあさんは、クバが元気がないとトロトロのオムレツを作ってくれます。オムレツにはケチャップで、ニコニコマンの顔が描いてあります。それを食べるとクバは、ニコニコ笑顔の元気マンに変身します。「本当にクバは強い子。おばあさんは、そんなクバが大好きよ。とても誇りに思うわ」そういって、いつもほめてくれます。
　おじいさんは、夜王様のそばで朝まで、仕事をします。悪い夢や魔女から、王様を守る為です。
　クバは、大きなおじいさんのベットで寝ています。おじいさんのいない夜は、冷たくて恐い気もします。でも、クバはおばあさんのベットに行きません。だって、暗い朝に帰ってくるおじいさんが、クバが眠っていると、うれしそうにヒゲもじゃの顔をこすりつけて、ぎゅーっと抱きしめてくれるからです。おじいさんの匂いはとても安心します。大きな胸に抱かれると、クバはふかーい眠りに入り、とてもよく眠れるのです。
　嵐の夜がやっと明けようとするある日、いつものようにおじいさんがベットに入ってきました。でも、クバを抱きしめてくれません。寝ぼけた顔でおじいさんを見ると、つらそうに息をして、恐い顔をしています。クバは、そっとおじいさんの手を握りました。冷たくて氷のような手でした。それから、ゆっくり、ゆっくりおじいさんに近づき、胸に顔をうずめました。そして、右腕をうーんと伸ばし、トン、トン、トンと肩をたたき始めました。あたたかいクバの息で、おじいさんの胸は、しっとりしました。伸ばした腕が痛くなってきましたが、クバはずっと、トン、トン、トン……とたたいていました。すると、ポトッとクバの頬をつたうものがありました。見上げると、おじいさんの目から涙が流れていました。やがて、疲れたクバは眠ってしまいました。冷たいおじいさんの手も、じんわり温かくなっていました。
　どのくらい時間がたったでしょう。どこからか、おいしそうな匂いがしてきました。起き上がりベットから出ていくと、いつもより大きなトロトロオムレツが、できていました。おじいさんが、コーヒーを飲んでいました。「あら、クバおはよう。ごほうびのオムレツよ。今日は、旗を立てたのよ。どうかしら……」見ると、勇者の姿をしたクバの絵でした。おじいさんが、こっそりウィンクしました。

童話作家緒島英二さんより

　温もりあふれる家族に囲まれた、クバの幸せな日々が心を和ませてくれます。クバはみんなの宝物ですね。