読者投稿オリジナル童話
掃除と受験男子
かんだ ゆみ(印西市 パート・45歳)
6年生の授業は長い。終了後、係は掃除もある。私と同じ班の村岡くんが係なのにすぐ帰ろうとした。掃除してよと言うと、「やだよ。てか、高木さん知ってる? 中学受験組は掃除やんないんだぜ。塾に直行」「そんなのウソ」「なんでわかんの? いつ確認した?何時に?」「うるさい! 今から確認してくる」「本当にしてなかったら俺一生掃除しないよ」
村岡くんの声を背中に私は1組へ行った。中学受験組は1組にしかいない。でも誰が受験する人だろう。何人か掃除をしているけど。「そこどいて? 塾に遅れる」男子に声をかけられた。塾? 受験組だ!
「あなた掃除しなくていいの?」「そうだけど自分でもいいのかなとは思う」男子は足早に去り、私はショックだった。本当にしないんだ。次の日、村岡くんが言った。「高木さん確認した? 俺のいう通りだったろ。やっぱり。俺はもう掃除しないからな!」
でも、村岡くんは先生に注意されて掃除をした。村岡くんは先生に受験組のことを言ったけど先生は許してくれない。そんな村岡くんがかわいそうに思い一緒に帰ろうと誘った。「受験組と掃除について話さない?」「いいね! 言いたいこと言いあおう」
私たちは何で掃除より塾が優先なのか。掃除はみんなの仕事! とか言いながら帰った。と、公園のベンチで座っている男子を見つけた。
「あれ受験組の男子だ。この前塾に遅れるからどいてって言った子」すると村岡くんは公園に入り男子に近づいて「もしかして塾、サボってんのお?」と、話しかけてしまった。男子は逃げずにそうだけど? とはっきり言う。「面白い話してたね。大声だから聞こえたよ。僕も話していいかな?」
そして男子はこうまくし立てた。「塾と掃除どっちがいいと思ってんだよ。断然掃除! みんなの役に立つのは最高だよ! 僕は中学に受かっても掃除はない。学校は外国で掃除をする仕事の人がいるんだ! 家の掃除さえママが将来そんなことするような仕事はやらせないからしなくていいとか言って! 塾を一回サボるくらいいいだろ!」私も公園に入り二人でまあまあと男子をなだめた。ってか、何これ? 村岡くんが君の気持ちを知らなくて悪かったと謝っている。それを見ていて、私はいいことを思い出した。「市で子どもゴミ拾いボランティアの募集してた! 面接でボランティアしたって言えるよ」受験男子の目が輝く。ママを説得するって。
日曜日、私たち三人はボランティアをしていた。受験男子がママの説得に成功したのだ。ゴミ拾いは大変だけど男子は嬉しそう。「僕、外国に行ってもボランティアする!」受験男子が言い、村岡くんが君イ変わってるね! と大きな声で言って私たちは笑った。きれいにした街並みを誇らしく思ったけど、普通の掃除も同じ気持ちでいていいよね!
童話作家緒島英二さんより
登場人物たちの、いたいけな優しさと、未来を切り開かんとする逞しさが伝わります。皆に、幸あれ。