読者投稿オリジナル童話
のんちゃんのお風呂
清水 久江(松戸市 主婦・71歳)
のんちゃんは幼稚園の年小さんです。
おばあちゃんとお風呂に入るのが大好きな女の子です。
おばあちゃんが「のんちゃんお風呂だよ~」と声をかけると、「はあ~い」と大きな声で返事をしながらお風呂場までかけだして来ます。
「あぶないよ!」とおばあちゃんが心配して言うと、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」とにこっと笑って、「早く、早く、ばあちゃんお風呂に入ろうよ」とおばあちゃんをせかします。
「はい、はい」二人は裸になると湯舟のお湯をかきまわし、「あつい!」と言いながら体にお湯をかけて、湯舟にドボーン。
「のんちゃん、肩までつかってね」「はあ~い」のんちゃんの長い髪は頭のてっぺんにお団子みたいになって乗っています。
「ばあちゃん、ブンブンブン歌って」のんちゃんが覚えたての歌をおばあちゃんにおねだりします。
「ブンブンブン、ハチがとぶ」
おばあちゃんが歌うと、のんちゃんはおばあちゃんの口元をじぃ~っと見つめながら、「ブンブンブン」と口をとがらせて歌い出します。
何度も何度もくり返し歌っていると、いつの間にかのんちゃんの顔は真っ赤っかです。
二人は体を洗って、髪も洗って、のんちゃんはぬれた髪をまた頭のてっぺんにお団子みたいに乗せて湯舟に「ドボ~ン」
「ばあちゃん、ブンブンブン歌って!!」
「ハイハイ」二人の歌声がお風呂場の窓から聞こえてきます。
庭の草むしりをしていたおじいさんも、いつの間にか「ブンブンブン」と歌っていました。
「のんちゃん、今度はじいちゃんといっしょにお風呂でブンブンブン歌おうね!」
そう心の中でおじいさんはのんちゃんに話しかけていました。
童話作家緒島英二さんより
優しく言葉をつなぐ中、読み手の心も湯舟で癒されていきます。三人の歌声が聞こえます。