読者投稿オリジナル童話

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おばあちゃんのにわ

船越 ちよみ(柏市 主婦・61歳)

 

 ももちゃんには、おばあちゃんがいます。ママのおかあさんです。きょうは、みどりいろのバスにのっておばあちゃんのうちにいきます。バスのえきを5こすぎたら、おります。それから、♪かえるのうたがー♪といっぱいうたったら、おばあちゃんのうちです。
 「おばあちゃーん!」よぶと、「はあーい」とでてきました。おおきなガラスのびんをかかえたおばあちゃんは、にこにこしています。にわのパラソルのしたのベンチにすわると、おばあちゃんは、びんのなかのきれいなあかいのみものをコップにいれてくれました。「ももちゃん、これはあかシソのジュースよ。あまくて、すっぱくて、げんきになるの。のんで……。ママも、どうぞ」
 「いただきまーす」ごくごくごく……。「ふー、おいしい! もっと、ちょうだい」ももちゃんのようすに、おばあちゃんうれしそう。「げんきでた! ママもげんきでた?」ママがうなずきます。「パパものんだら、げんきになる?」「なる、なる。げんき、ひゃくばいよー」おばあちゃんがいいました。ももちゃんは、くびからさげたすいとうをあらってもらい、自分でジュースをそうーっとそうーっといれました。「パパだいすきだから、ももあげるんだー。パパよろこぶよ」ママもおばあちゃんもうんうん……となんどもうなずきました。
 そのとき、あげはちょうがとんできました。ひらひらひら……。きいろとくろのはねがドレスのようです。みていると、トゲトゲのあるみどりいろのはっぱのうえにとまったり、とびまわっています。ももちゃんがのぞきこむと、ちいさなウンチがありました。よばれたおばあちゃんは、ちょうちょのあかちゃんだよ……とおしえてくれました。とりやあまがえるにたべられないように、ウンチのまねをしているそうです。「もっとおおきくなったら、みどりいろになって、たべられそうになったらきいろいつのをだすんだよ」「えー、つのだしてどうするの?」「くさーいにおいをだして、やっつけちゃうの。つよいんだよ」「それから、トゲトゲのはっぱをたべているとき、とりにみつかっても、トゲトゲがあかちゃんをまもってくれるんだよ」「トゲトゲさわったら、いたいねー。もものおててからちがでちゃった」おばあちゃんがくすりばこをもってくると、ママがやさしくてあてしてくれました。
「さあ、おくすりつけたし、ももちゃんかえろう。パパが、かえってくるわよ」ママがいいました。でも、ももちゃんはまだかえりたくなさそうです。「パパ、ももちゃんのすいとうにはいったあかいジュース、きにいるかな?」おばあちゃんがいうと、ももちゃんはいそいそしたくして「バイバイ」とかえっていきました。またおいで……ももちゃん。

 

童話作家緒島英二さんより

 蝶を通して生命の不思議、シソジュースを通して家族の繋がりが、心地よい文体で表現されています。

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