読者投稿オリジナル童話
やじろべえ
かとう ようこ (柏市 主婦・57歳)
「つまんない」
ハルちゃんは、夏カゼをひいてしまったのです。
ママは「おねがいだから、おとなしくねててね」といいます。
ハルの大すきなおばあちゃんにも
「うつったら大へん。ハルにはちかづかないでね」 とはなしています。
「つまんない」
もうお気に入りのビデオもあきちゃった。いまごろは、ようちえんのおやつタイムかなぁ。お友だちのリュウちゃんとおにごっこもしたい。
「つまんないなぁ」
コンコン、コンコン。ドアをたたく小さな音がきこえます。おばあちゃんです。ドアのすきまから、かおをのぞかせています。ハルちゃんを見ると、こっそりへやにはいってきました。手には小さなお人形をもっています。
「これはね、やじろべえっていうの。うでのところを、そっとさわってごらん」
おばあちゃんがお手本をしてくれました。あれ、お人形の体が、右と左にブランコする。
ゆら、ゆら、ゆら。なんだか、おゆうぎしているみたい。
ハルちゃんもやってみました。
ゆら、ゆら、ゆら。なんだか、おうたをうたっているみたい。
もういちど。
ゆら、ゆら、ゆら。
ゆら、ゆら、ゆら。
ハルちゃんの体も
ゆら、ゆら、ゆーら。
いつの間にか、ハルちゃんはねむったようです。おばあちゃんは、そっとへやをでていきました。
もういい、かい。まぁだ、だよ。もういいかい。もういいよ。
目がさめたとき、ハルちゃんの夏カゼはすっかりなおっていました。
童話作家緒島英二さんより
「夏カゼ」を題材に、全体が上手にまとめられています。「やじろべえ」が、ファンタジックな気配を感じさせます。