読者投稿オリジナル童話

過去の話題一覧

カンカンクラブへ いらっしゃい

かんだ ゆみ(印西市・パート・45歳)

 

  「5年生になったら運動クラブに入ってもらいます。入りたいクラブをプリントに書いて。これは全員強制です」
 先生がプリントを配りながら言う。クラブがあるのは知ってたけど、全員強制? すごく嫌だ。スポーツは下手だし、うまくいかないと先生に怒られるんだろ。やるかどうかは選ばせてくれたっていいじゃん! 僕は怒って白紙でプリントを提出した。明日先生に言われるけど知らないよ! そのまま怒りながら学校を出ようとすると変な杖を持ったシルクハットのおじさんに君、と止められた。
 「いい怒りっぷりだね。カンカンクラブに来ないか?」知らない人に返事はだめだけどクラブのことだったのでなんですかと聞いてしまった。
 「カンカンクラブは怒りまくってスッキリするクラブさ。入ればもちろんほかのクラブに入らなくてもいいんだよ。よかったら見学に来ないか? 見たらきっと気にいると思うよ」なんか怪しいけど、おもしろそうだから見てみようかな……とちょっと思うと「はい、決まり決まり!」シルクハットのおじさんは僕の手をつかんでカンカンクラブの方へ引っ張っていった。僕まだ何も言ってないのに! 僕は学校の片隅に連れて行かれた。ここには何もないはずだったのにいつのまにか家みたいなのがたってる。屋根は赤紫で壁は黒。おじさんが木の扉を開けると、うおおおおおお!!とすごい怒鳴り声がした。たくさんの人が怒ってバタバタと暴れている!「あの野郎!」「ふざけんな!」大人の人まで!
 「大人だって怒りたい時はあるだろ」そりゃそうだけどさ……「なっすごいだろう。怒れ怒れ〜ハッハッハ」何がおかしいのかおじさんは愉快そうだ。「みんなだっていつも怒ってるわけじゃないだろ? そんなときはこなくていいの?」
 「それは困る。いいか、おじさんが持ってる杖のてっぺんを触ると自動的に嫌なことを思い出してカンカンになれるようになってるんだ。どうだい? 気に入ったかい?」
 「気にいるわけないよ! みんな! こんなクラブよくないよ! わざと怒るなんて気分が悪くなる! こんなクラブは、ダメダメ! ナシ!」
 あきれかえった僕が大声でみんなに伝えるとカンカンクラブは、どんどん膨らんでいった。何だこれ? と思っているとパァン! と音がした。びっくりして目を閉じ、ゆっくり目を開けると、あれ? 僕は校門の前に立っていた。なに今の? 夢? さっきまであったカンカンクラブの家まで行ってみたけどやっぱり何もなかった。なんか怖っ。そう思った僕は急いで家に帰った。それで、結局次の日に僕は先生に言ってウォーキングクラブに入れてもらうことにした。30分くらい学校の周りとかを歩いておしまいのクラブだって。これなら下手くそでも怒られないからいいや。だってさ、カンカンクラブなんかよりずっといいだろ!

 

童話作家緒島英二さんより

  発想の豊かさ、面白さが光ります。ひとりひとりの個の叫びを、大人は忘れかけているのかもしれません。展開もユニークです。

Copyright(C) 2012 RESUKA Inc. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.

朝日れすかPLUSのホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。

ページトップへ