読者投稿オリジナル童話

過去の話題一覧

せみしぐれ

ペンネーム・じんしょう(流山市・自由業44歳)

 

 夏の午後、森のなかで、カラオケ大会がひらかれました。鳴き声じまんのセミたちが、チチッ、ツツツッと、まるで音をたしかめるように、すこしだけ鳴いて、またしずかになるのをくり返しておりました。
 そんななか、一番目にうたいはじめたのは、ミンミンゼミでした。
 「ひとり ふたり さんにん よにん
 それから あとは、 たくさん みんな
 ミーンミン みんな
 ミーンミン みんな!」
 元気なミンミンゼミが、明るくうたいあげました。
 すると、待ちきれないように、つぎのセミがうたい出しました。それはアブラゼミで、雷のようにギザギザした声が、あたりにひびきわたりました。
 「ジー ジー ジー
 おれは ジョージー
 ジー ジー ジー
 かのじょは デイジー
 ジー ジー ジー
 ふたりは エンゲージー!」
 客のせみたちも、いっしょになってうたいました。
 ところが、しばらくすると、水をうったように、ふとしずまり返りました。そろそろ、夕方になっていました。いよいよ、ヒグラシの出番です。
 ヒグラシは、しんみりとうたいはじめました。
 「たびが よんでる きがしたけれど
 おいてく かこが ひきとめる
 あしは まえに きもちは せなかに
 いこうかな もどろかな
 カナ カナ カナ…… カナ カナ カナ……」
 ヒグラシの歌がおわると、はくしゅがおこりました。
 さあ、さいごは、みんなで大合唱です。ニイニイゼミや、クマゼミ、ツクツクホウシもくわわって、空いっぱいに、じぶんたちの歌をうたいあげました。
 「ミーン ニイニイ ジージー シャア
 チチッ カナカナ ツクツク ホーシ」
 こうして、カラオケ大会は、おおもりあがりでした。
 せみたちは、ちからのかぎりに、歌をうたいました。まるで、雨のようにふる声は、地面におちて、ひろがっていくのでした。
 そこには、せみの子どもたちがいて、歌をきいていました。来年の夏になれば、その子どもたちがまた、カラオケ大会をひらいて、みんなで元気よくうたってくれることでしょうね!

 

童話作家緒島英二さんより

 ユーモラスな文体で、森の明るさが心に染みてきます。生命のつながりも感じました。歌詞の整理をお勧めします。

Copyright(C) 2012 RESUKA Inc. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.

朝日れすかPLUSのホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。

ページトップへ