読者投稿オリジナル童話
真ちゃんは強い!
吉田 信(流山市 警備員 78歳)
一年生の真ちゃんは、学校から帰ると「ただいま!」「お帰り」とママがギューをしてくれるのが嬉しくて堪らないのです。「ママ百点取ったよ」「ワォー」って、力一杯ギューをしてくれるので、ママが大好きです。ところが、昨夜遅くママが突然倒れ、パパが慌てて病院へ連れていきました。しかし、原因不明のまま二日後に真ちゃんにもパパにもさよならも言わず帰らぬ人となったのです。
以来、真ちゃんはパパともお婆ちゃんとも会話が少なくなり「ママのお料理でなければ食べたくない」と三日も食べていません。ふと何か閃いたお婆ちゃんは味噌ラーメンを作り「ママのラーメンよ。真ちゃんが今まで食べていたラーメンはお婆ちゃんが教えたのよ。紛れもないママの味よ」。すると真ちゃんは四日振りにテーブルに着き、スープを一口口にすると「あっ、ママの味だ、ママのラーメンだ」。笑顔で食べはじめたのです。
その夜、本降りの雨となり真ちゃんは独り自分の部屋で眠りについたのです。寝静まった真夜中、闇をつんざく稲光りピカッ、ゴロゴロゴロ、真ちゃんは目が覚め怖くて布団に潜り込み「ママ怖いよ、助けて!」。するととてつも無い大きな光ピカッ。その光に乗ってママと黒い小犬が窓から入って来たのです。
「真ちゃん、ママよ。ママは病気でお星さまになってしまいごめんね。これからはギューは出来ないけれど、真ちゃんの心にずーといますからね。犬のロンを連れて来たの。ロンはお話が出来るので、困ったことがあったら話をしてね」「ママは行っちゃうの?」「ママはお星さまになったの。二度とここへは戻れないの。星の世界と地球の世界の掟なの。もう少し真ちゃんも大きくなったら分かると思うわ。ロンはママよ、分かった?」「うん分かった。ママありがとう」。一瞬にしてママはいなくなりました。
真ちゃんは一晩中ロンとお話をしていたため朝になって起きるのを忘れていました。パパが「真、起きなさい。学校遅れるよ」と部屋に入って来ました。「ロン。ほらパパが起こしに来たのでゴメン、又後でね」「真大丈夫か。誰も居ないのに独り言を言って」「タベママがロンを連れて来てくれたんだよ。ロンとお話をしていたの。ほらベットに黒い小犬が座っているでしょ」。パパは一瞬呆然と立ちつくし、ふとママと結婚した当時を思い出したのです。ロンと呼んで可愛がっていた黒い小犬を。でも、真ちゃんが知る由もないロンと言う名をどうして知ったんだろう。この世は不可思議な現象が起こるもんだと吊り革につかまりながら通勤電車で会社に向かうパパの独り言「真が元気で笑顔になったことが一番だ。良かった良かった」。
童話作家緒島英二さんより
感性豊かなお話で、真ちゃんの姿が心に染みてきます。生命の深いつながりを感じました。漢字の使用方(多用)だけ、御一考ください。