読者投稿オリジナル童話
未来の約束
関口 麻里子(柏市 パート 53歳)
小学校がお休みの日、ミカはシオリさんに会いに、お家へ行きます。シオリさんは、ミカのばーばです。
今日もリビングで、シオリさんとお話しをしていると、エプロンのポケットから、赤い色の細長い品物をだしました。「昔の物だけど、よかったら、ミカに持っていてほしいな。万華鏡っていうのよ」
シオリさんは、万華鏡の中を、見ながら回しています。
「ありがとう」ミカはシオリさんから万華鏡を受け取ると、同じようにして中を見ました。
「きれいだね。私も大人になったら、みんなに喜んでもらえる物をつくりたいなあ」
「そうだね、なれるといいわね」
「はい、今日は帰るよ」
「また、来てね」
シオリさんは、ふっくらとした笑顔でした。
ミカがお家をでると、女の子が話しかけてきました。
「ミナミバス停は、どこかわかりますか」
「そこなら家の近くだよ。一緒に行こうよ」
「はい、ありがとう」
ミカと女の子は、並んで歩きました。
大通りを八分ぐらい歩くと、きりん公園が見えました。ミカと女の子は公園を歩くと、女の子は花だんのそばにいる、赤と黒のしましま模様の毛虫を見つけました。
「毛虫も時間が流れると、変わっていくけれど、私達はなにになるのかなあ」
女の子は、つぶやきました。
「私、万華鏡をもらったの。見てほしいなあ」
ミカは手に持っていた万華鏡を、女の子に渡すと、女の子は万華鏡の中を見ました。
「気持ちがあったかくなる、きれいだね」
「私も大人になったら、気持ちがあたたかくなるような物を、つくりたいと思ってるよ」
「素敵な夢だね、かなえてね、約束よ」
「うん、約束する」
ミカは大きくうなずきました。
公園の外には、バス停が見えます。「あれが、ミナミバス停だよ」ミカが言うのと同時に、バスがやって来るのが見えました。
「ありがとう、また、会えたらいいね」
「同じ曜日と時間と場所なら、会えそうだよ。また、会おうね」
女の子は手を振ってから走ると、空色のスカートがふわりとゆれました。(今度、会った時に名前を聞こう。私も空色のスカートを着てみたいなあ。女の子はどこに行ったのかなあ)ミカは思いました。
ミカが公園をでると、通りには誰もいません。振り向くと、公園の木々が、風でさらさらとゆれていました。
童話作家緒島英二さんより
堅実な文章力が光ります。登場人物が、とても魅力的に描かれ、物語に引き込まれます。