「記者の楽しさは何か」と時々問われる。常にこう答えている。「自分の疑問を専門家から教えてもらえること」だと。
例えば「イカ墨パスタ」はあるのに、なぜ「タコ墨パスタ」は、ないのか。それは、タコとイカの生存戦略の違いだ。
敵に襲われたとき、両者とも墨を吐いて敵の目をくらまし、そのすきに逃げる。ただ、タコは文字通り「煙幕」として墨を吐く。だから、吐いた墨は海中に「バッ」と広がり、文字通り、敵の目をくらませる。
一方、イカは自分の代わりに墨を食わせ、その間に逃げる。イカの墨は海中にゆらゆら漂う上、うまみがある。敵が「これ、うまっ!」と墨を食っている間に逃げる。うまみがあるので、イカの墨は食材になるのだ。
「浦島太郎のカメ。あれは何ガメですか?」。元名古屋港水族館長でウミガメの世界的な研究者だった故・内田至氏は、「メスのアカウミガメですよ」と即答だった。
疑問を持つ~専門家に尋ねる~それを読者に伝える。記者の仕事は面白い。ただ、新聞は近年、「オワコン」(終わったコンテンツ)とも揶揄される。新聞の情報に対して購読料というお金を払ってくれる読者が減り続けている。朝日れすかの読者のみなさまに、僕たちの仕事は支えてもらっている。
朝日新聞柏支局長 抜井規泰

