かとう ようこ 柏市 主婦・61歳

ジー、ジリジリジリ
ジー、ジリジリジリ
「大きな声を出しているのは、だれだい」
「こんにちは。わたしはアブラゼミといいます」
「ぼくはミツバチ。お花畑でミツを集めて、おうちに帰るとちゅうなんだ。おじさんのおうちはどこ?」
「おうちですか。わたしにはありませんよ」
「じぁ、この木をおうちにするといいよ。あしたまたね」
翌日
「ミツをたくさん集めるとママがよろこんでくれるんだ。おじさんのママは?」
「ママですか。わたしはママを見たことがありません」
ミツバチは、ふしぎでしかたありません。
「わたしはたまごから生まれて、虫のすがたで土の中で過ごしていました。冷たい土があたたかくなって一年。これを何回かくり返して、やっと地上に出てきました。そして今のすがたになったのです」
「……」
「地上ではじめて目にしたのは、光の矢でした。シューと音がしたので夜空を見上げたのです。まぶしくて、きれいだったなぁ」
「それはきっと流れ星だよ。空からのとくべつなおくりものなんだって」
それからミツバチは、セミのおじさんのところに寄り道して帰るようになりました。
数日後、今日はとても静かです。
「おじさんどこ? 鳴かないの」
「鳴くのはすてきなおよめさんを探すためです。もう見つけました。来年の春には、たくさんの子どもたちが生まれてくるでしょう」
「よかったね。でもおじさん、どうしてそんなに元気がないの」
「わたしはこのすがたになったら、七日くらいしか生きることができません。もうこしも曲がり、あなたの顔もぼんやりしか見えないのです」
その時でした。夕方の空からひときわ強い光が、一すじふってきました。
「流れ星だよ、おじさん。見た?」
「……。ああ、ああ、見えました。星が流れる音もきこえてきましたよ。やっぱりきれいだ。ありがとう」
アブラゼミは、わらっているようでした。
暑い夏は、もう少し続きそうです。
童話作家 緒島英二より
ミツバチとアブラゼミの姿から、生命の尊さを感じます。流れ星のように、生きることとは、長い歴史の中で一瞬のものなのかもしれません。だからこそ、こうした出会いが大切なのですね。

