(読者投稿オリジナル童話)日菜と夏

千倉 じゅん子
   柏市 パート・50歳

小学六年生の鈴木日菜の悩みは背が低いこと。友だちと写真を撮る時、みんなより頭ひとつ分低くて目立つのも嫌だし、男子と口論になる時、「チビのくせに!」と言われるのもむかつきます。
 背が低い女の子が登場して活躍する『大きい1年生と小さな2年生』と『ミリ子は負けない』という本が日菜のお気に入り。図書室で何回も借りて読んでいます。
「中学生になったら背が伸びるよ」とパパもママもなぐさめてくれますが、「二人とも背が低いから、それは期待できないなあ」と日菜は思っています。
 ある日の放課後、図書委員の仕事が終わり、帰ろうとしたら、雨がザーザー降っています。傘を持ってこなかった日菜が昇降口で困っていたら、同じクラスの緑川夏さんが通りかかりました。
「あれ? 鈴木さん、どうしたの?」「傘を忘れちゃって……」「じゃあ、私の傘で一緒に帰ろうよ」「いいの?ごめんね。ありがとう」
 クラスの女子の中で一番背が高い緑川さんは大人用の大きな傘を持っていたので、二人で入ってもぬれません。
「緑川さんは背も高いし、バスケも頑張っていて、かっこいいよね」
「いや、背が高いのが悩みなのよ……」
「え? どうして?」
「バスや電車で子ども用の交通系ICカードを使う時に大人じゃないのかと疑われたり、背が高いだけでパスもシュートも失敗が多くて、チームの足を引っ張っているから、やめようかとちょっと悩んでいるんだ」
日菜はびっくりしました。
「そうなんだ。私は背が低いのが悩みだけど、緑川さんは逆に背が高いのが悩みなのね」
「背が低い方が可愛い洋服も似合うし、うらやましいよ」
「背が高い方が大人っぽい服を着られるし、うらやましいよ」2人は顔を見合わせて笑いました。
「緑川さん、今度試合はいつなの?」
「春季大会は再来週の土曜日」「応援に行っていい?」
「えー、私が下手なプレーをする姿を見られるのは恥ずかしいな」「そんなことない! 私が全力で応援するから大丈夫!」「それは頼もしいね」
話をするうちに、日菜の家の近くまで来ました。
「緑川さん、ありがとう。また明日ね」
「うん、またね」
 手を振って別れた後、日菜は「バスケ部が出てくる本をあとで探してみよう」と思いながら家まで走りました。
 さっきまでザーザー降りだった雨も、小雨になり、空も少し明るくなってきました。

童話作家 緒島英二より
個性という宝物をお互いに見つけ合い、尊重し合う姿が、なんとも好ましく伝わってきます。二人の友情は、認め合うことの大切さを秘めて、いつまでも育まれていくのでしょう。

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