(キネマの世界)シンプル・アクシデント 偶然

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 今回ご紹介する映画は、昨年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で最高賞であるパルムドールを受賞した『シンプル・アクシデント/偶然』。イランの巨匠ジャファル・パナヒ監督による今作は、自身の二度に渡る不当投獄経験や同じ境遇の人々の声から着想を得て映画化された。
 政府に投獄され人生を奪われた過去を持つ主人公・ワヒドは憎き看守と再会し、咄嗟にその男を拘束、荒野に生き埋めにしようとするが、彼は「人違いだ」と言う。獄中では目隠しをされていたため看守の顔を見たことがないワヒドは、自身の復讐に疑念を抱き始める。男は、本当に復讐相手なのか。過去に投獄され看守を知る友人を訪ねるが、誰もその顔を知らない。復讐に向かう彼らの行き着く先は――。
 この「偶然の事故」を発端にドライブしていく物語は予測不能でスリリング、時にユーモラスであり、それと同時にイランの社会における現実を突きつける社会派サスペンスにもなっている。
 理不尽な暴力と復讐。怒りや苦しみ、憎しみとその連鎖を断ち切ろうともがく道徳的ジレンマ。今こそ見られるべき映画の一つとなっている。 (橋岡直人)

フランス・イラン・ルクセンブルク合作/103分
キネマ旬報シアター柏で上映中

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