
江戸幕府15代将軍徳川慶喜の弟で、明治維新後、松戸市の「戸定邸」で暮らした徳川昭武を描いた絵本が完成した。同市にキャンパスがある聖徳大学短期大学部保育科の学生有志でつくる「まつどソング研究グループ」が、戸定歴史館と連携して制作した。
戸定歴史館と連携
絵本の題名は『とくがわあきたけ まつどにくらしたおとのさま』。松戸市の歴史を語る上で欠かせない昭武や戸定邸のことを、子どもたちに知ってもらおうと制作された。戸定歴史館館長の尾形一枝さんは「行政だけだとどうしても堅くなりがち。学生たちのフレッシュなアイデアを生かしたかった」と話す。
昭武は水戸9代藩主徳川斉昭の18男で、慶喜とは16歳違い。1867年、13歳のときに慶喜の名代としてパリ万博に派遣される。その後、欧州各国を歴訪。次期将軍候補を意味する「プリンス・トクガワ」と紹介された。明治維新によりパリでの留学生活を中断して帰国。16歳で水戸藩最後の11代藩主となる。隠居の地である松戸に戸定邸を構えたのは1884年。狩猟や釣り、写真撮影、自転車、料理など多彩な趣味の持ち主だった。
学生たちは資料収集のため戸定歴史館に何度も足を運び、尾形館長や学芸員から話を聞いた。ストーリーを練り、絵を描く作業と同時進行で、昭武の趣味を盛り込んだ「あきたけさん手あそびうた」の歌詞と振り付けを考え、年表のすごろくも制作した。完成までに10カ月かかった。
絵本はAB判、全30ページ。昭武の兄弟の人数を数えたり、見開き3ページの絵のなかから昭武を見つけ出したり、子どもの興味を引くよう工夫した。メンバーの小松桃花さん(20)は「親子で対話しながら楽しんでもらえれば」と期待する。手あそびうたとすごろくも収録した。
3月30日に開かれた制作発表会では、学生たちが戸定邸の広間で園児らに絵本を読み聞かせ、手あそびうたを披露した。登場するキャラクターのデザインを担当した昨春の卒業生で、保育士の一郷小聖さん(21)は「丸顔でかわいらしく、だれからも愛される『あきたけさん』にしたいと思った」と話す。
絵本は市内すべての幼稚園や保育園、小学校などに配布される。
まつどソング研究グループは保育科1、2年生有志による課外活動グループとして2015年に発足。毎年10人前後が参加して「子どものふるさとと愛を育む教材開発」をテーマに活動している。昨年11月23日には昭武を題材にした子ども向けのイベントを戸定が丘歴史公園で開き、制作途中の絵本を初披露した。