(読者投稿オリジナル童話)二つの 紙飛行機

関口 麻里子  柏市  パート・59歳

 由香さんは、自転車で買い物に行った帰り道に、前かごに入れた買い物袋の重みで、自転車をかたむけて転んでしまいました。
(右足がいたい)由香さんは、自転車を押して、家に帰りました。そして、タクシーで病院へ行きました。
「少し強く打っただけで、骨は折れてないから、大丈夫です」先生はそうおっしゃり、看護師さんは、すり切れた傷の手当てをしてくれました。由香さんは、家に帰ると、今夜、遊びに来る予定の娘へ、携帯電話で連絡しました。
『ごめんね。たいしたことないけど転んで、今夜、夕食作れないから、来ないでね』
『大丈夫なの。それなら、おかず買って行くから。野菜はせいろ蒸しでいいよね』
『ありがとう、仕事忙しいのに』
『これぐらい平気だから、ゆっくり休んで』  
 夕方になると、娘の菜々美さんと孫の青葉君がやって来ました。菜々美さんは夕食の準備。青葉君はリビングのテーブルの椅子に座っている由香さんのそばに居ました。「ばーば、右足いたかったの。大丈夫」
「ありがとう。いたかったけど、もう大丈夫。それより、青葉は保育園楽しいかな」
「うん、保育園楽しいよ。ばーば、ここがいたかったの」
 青葉君はそう言うと、由香さんの右足をなでたり、由香さんの周りを行ったり来たりしました。
「青葉、ばーばに久しぶりに会えてうれしいのよ。パパ、仕事が忙しくて、あまり会えないから」
 料理をしている菜々美さんが、話しかけてきました。
「私、今、あまり用事できなくても」
「もちろん、今までもこれからも、居てもらえるだけでうれしいのが当てり前でしょ」
「うん、ありがとう。そうなんだ」 由香さんの胸の中で、灯りがポッとついた気がしました。
 やがて、食事の準備も出来て、その頃に、じーじも帰って来て、夕食にしました。食後は、今、青葉君のマイブームの折り紙をしました。いくつもの紙飛行機を折ると満足して、ママと家に帰って行きました。由香さんは眠る時、ベットのサイドテーブルに、緑と黄色の紙飛行機を置きました。由香さんは、この頃、今までの人生を振り返ることが多くなりました。 (もっと旅行がしたいとか、美味しい物を食べたいと思っていたけど、一番大切なことはここにあったんだ。だけど、いつの日か、青葉達と本物の飛行機に乗って、どこかへ旅がしたいなぁ)由香さんは、行先を考えながら、ぐっすりと眠りました。

童話作家 緒島英二より
 怪我をした由香さんを囲んで、娘さんや青葉君との温かな関わりが胸に届き、優しさに包まれることの幸せを感じ取りました。紙飛行機に乗って、みんなの心が明るい空へと向かっていくのですね。

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