かとう ようこ
柏市 主婦・62歳

森の奥。広い野原が見えるここには、一人の魔法使いのおばあさんが住んでいます。
「今なら、できるかもしれない」おばあさんはつぶやきました。
魔法使いのおばあさんがつえをひとふりすると、あら不思議。食べ物も洋服も、おうちだって思いのまま。何でも苦労せず作ることができます。でも、おばあさんには、たった一つだけ自分の手で作りたいものがありました。それは、生まれてくる孫娘に贈る「マント」です。
魔法使いといえど、永遠の命があるわけではありません。おばあさんはもう若くはありませんでしたから、急がなくてはなりません。さっそく練習をはじめました。
まずはミシンを出してきて、カタカタ。針で手をさすやら、ぬい目が曲がるやら、さんざんです。次は布を切ってみます。チョキチョキ。型紙からずれて、ぎざぎざです。「魔法なら簡単にできちゃうのに……」でも、毎日コツコツやると、少しずつ上達していきました。
そして、いよいよ、おばあさんは本番にとりかかることにしたのです。チョキチョキ、カタカタ。できたのは、真赤なマントでした。魔法のつえを持つ手袋もあわせてぬい上げました。
「できたわ。これでいつ孫娘が生まれてもだいじょうぶ。渡せるわ」おばあさんはまたつぶやきました。そして二つを箱に入れると、大きなリボンでしっかりと結びました。
あの野原に、秋にはめずらしいタンポポがフワフワととんでいます。赤いマントに包まれた女の子は、初めて見た綿毛が不思議だ ったのでしょうか。手袋をした両手をそっとのばしました。
童話作家 緒島英二より
魔法を使わずに、孫娘への贈り物を作るおばあちゃんの、一所懸命な顔が目に浮かんできます。そこには、心と心の繋がりや温もりがあるのですね。ラストの素敵なシーンが、ずっと心に残ります。

