戦争の記憶、後世へ 柏の秋水燃料庫跡を公開 高射砲連隊施設も補修

 戦後80年の今年、柏市に残る2カ所の「戦争遺跡」が、次の世代へ記憶をつなぐための補修や周辺整備を終え、一部が公開され始めた。

秋水燃料庫

「秋水」の燃料庫跡と柏歴史クラブの上山和雄代表=柏市

 つくばエクスプレスの柏の葉キャンパス駅近く。こんぶくろ池自然博物公園の1号近隣公園エリアで、直径1.8メートルのヒューム管(鉄筋コンクリート製の管)を間近に見ることができる。旧日本軍のロケット戦闘機「秋水」の燃料庫跡だ。
 太平洋戦争末期、秋水はドイツのロケット戦闘機をモデルに、高度1万メートルを飛ぶアメリカのB29を迎撃しようと、開発が進められた。柏の葉地区に当時あった陸軍の柏飛行場が配備先の一つとなり、パイロットが同じ形の練習機で訓練をするなど準備が進められた。しかし1945年7月、試験飛行は失敗し、翌月、日本は敗れた。
 特殊な燃料を貯蔵するため、秋水の完成前から飛行場周辺に、燃料庫の整備が進められていた。柏の葉地区では戦後、人々の記憶から消えかけていたが、柏歴史クラブが2010年、半地下に残る複数のヒューム管を確認、市に保存を求めた。市は公園内の1カ所について表土を取り除き、説明板を設置、5月から公開を始めた。

柏飛行場に配備された秋水と同じ形の練習機、軽滑空機「秋草」=故田中昭重さん所蔵、柴田一哉さん提供

高射砲連隊演習施設

 JR北柏駅に近い同市根戸に残る旧陸軍高射砲第二連隊の演習施設「照空予習室及測遠器訓練所」も、今春、外壁や屋上の劣化を防ぐための工事を終えた。
 鉄筋コンクリート造りで高さは10メートル。中は吹き抜けで、様々な空の状況と敵機を室内に映し出し、高射砲で撃ち落とす指示の訓練をしたと考えられている。屋上には起重機装置(エレベーター)の支柱が残り、「測遠器」を吊り上げ、敵機との距離を測る訓練をしたとみられる。国内に現存するのは柏も含め2カ所だけで、2023年に国の登録有形文化財になった。市文化課は「地域に残る、戦争の歴史を伝えていきたい」という。耐震の問題もあり内部は非公開だが、市は施設の活用を検討する。
 それぞれの施設の保存を求めてきた柏歴史クラブの上山和雄代表は「柏にはこの2施設だけでなく、目立たないけど、戦争に関連する様々な施設があり、社会全体が戦争を支えていた。その厳しい時代があり、そこからの復興があった。今につながる歴史を、若い人たちにもきちんと知ってもらいたい」と話す。同クラブは夏に柏周辺の戦争遺跡やその位置づけを伝える展示会を計画している。

外壁や屋上の補修を終えた高射砲第二連隊の演習施設=柏市

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