(オリジナル童話)みんな仲間だよ!

青柳 幸男(流山市・80歳)

 「さようなら、みんな!」ジョイは空に向かって叫んだ。夕焼けに染まる空には、北へ帰る白鳥の群れが群れをなして飛んでいる。
 「いいんだ、オレは一人には慣れっこさ」 ジョイは仲間の中でいつも一羽で離れていた。仲間の羽をつついたり、餌を横取りしたりして、みんなに嫌われていた。
 ジョイは仲間に入りたくて、わざと目立つことをしていたが、仲間にとっては意地悪でしかない。だんだん一羽ボッチになっていった。この間、痛めた羽を庇うようにして長い首を岩に横たえていた。
 それは、三日前の出来事だった。
 天気は良く、湖面は静かでたくさんのカモの親子や白鳥が餌をついばんでいた。トン! トン! 湖面の水が少しづつ波打ってきた。岸辺の崖からは小石がポロッポロ。なにやら地震のようだ。崖の下には三羽の子ガモ。「危ないっ!」ジョイは目一杯の速さで飛んでいき、子ガモの上に羽を広げた。ドッ! ドッ! ドウン! パラ! パラ! パラ! と小石が落ちてきた「痛え―!」羽に当たったようだ。子ガモたちにはケガはないようで、一生懸命に足を動かして親ガモのところに泳いで行った。
 それからのジョイは、岩場でぐったりしていたが、まわりが急に騒がしくなったので、長い首を持ち上げてみた。すると湖一面がカモで埋め尽くされていた。「何? 何だ?」すると一羽のカモが「昨日、あなたに子どもを助けていただきました。あなたはこれから北へ帰るのでしょう? 羽をケガしているようだから、私たちの羽を継ぎ足せば大きな羽になるでしょう。それでこうしてみんなで集まってきました。先ず私がエイッ」と羽を一本抜きました。すると他のカモも「エイッ」「エイッ」と次々に羽を抜いていきました。ジョイは慌てて、「いいよ! いいよ! そんな事をしたら、みんな飛べなくなる。一年我慢して冬になったら、また仲間が来る。それまでにはきっと良くなっているさ」「それでは私たちのお礼の気持ちにならない」「私たちは空高くは飛ばないから」などと言いながら次々と羽を抜いていった。
 その時、空から「おおい、ジョイ」の声。見上げると、数十羽の白鳥が飛んできた。「ジョイ、大丈夫か?」「ジョイ!」群れの真ん中に大きな網があり、そこから延びたヒモをそれぞれにくわえゆっくり降りてきた。「ジョイ、羽をケガしたんだろ? ジョイを運ぶために網を探していたんだ」「ジョイ、一緒にかえろう! 仲間だよ!」「みんな! みんな、ありがとう」「カモさん、ありがとう! 仲間がきてくれた」。カモたちは「さようなら! 元気でね!」と言うように一斉に湖に羽を打ち立てた。「カモさん、ありがとう!」網に乗ったジョイと仲間たちは、カモたちの頭上でゆっくりひと回りすると北に向かって旅立って行った。

童話作家 緒島英二さんより
 仲間に入りたくてもなかなか入れず、自分を一羽ポッチだと感じていたジョイ。そんなジョイの、本当の心の優しさがみんなにしっかりと伝わっていきました。仲間という絆が深く心に染みます。

タイトルとURLをコピーしました