弱視者の学びをサポート、ボランティアで拡大教科書作製 柏市拡大写本サークル

柏市拡大写本サークルの会員。前列中央が傍島代表=柏市中央公民館

 弱視や発達障害の児童・生徒に、より学びやすい教科書を届けたい――。そんな思いを共有し、利用者一人ひとりの見え方にあわせた「拡大教科書」をつくっているボランティア団体が柏市にある。教科書会社から標準拡大教科書が発行されているにも関わらず、県内外から作製依頼があるという。
 拡大教科書をつくっているのは「柏市拡大写本サークル」(傍島純子代表)。市社会福祉協議会主催のボランティア養成講座の受講者で1977年に設立された。現在、会員は50~80代の25人。ほぼ週1回のペースで同市中央公民館に集まって作業をしている。

見やすさ重要視

 弱視の症状は単に視力が弱いだけでなく、視野が狭い、光がまぶしい、眼球が無意識のうちに動くなどさまざま。新年度の拡大教科書作製依頼を受けると、利用者の要望をもとに文字の大きさ、行間や字間、書体などの仕様を決めて作業を開始する。総ルビや白黒反転なども対応可能だ。
 原本教科書のデジタルデータは、教科書会社から提供される。画像を見やすく加工し、レイアウトしていく。校正とデータの修正を繰り返し、製本と裁断の工程をへてようやく完成となる。パソコンで編集できるようになったいまでも、1教科すべてをつくるには数カ月かかるという。
 製本担当の渡辺裕子さんは「教科書会社の拡大教科書とそん色のないものをつくり、利用者がコンプレックスを感じることがないようにしたい」と話す。「見やすく、美しく、壊れにくい。試行錯誤しながら、よりよいものを探求していきたいですね」
 原本教科書1冊が、拡大教科書では数冊~二十数冊のボリュームになる。今年度は大分や長崎など県内外の小学生3人、中学生3人から依頼があった。高2~3年の英語を含めると271冊を作製した。ピークの2006年には、108人分2539冊もの拡大教科書をつくっていた。

デジタル教科書

 文部科学省は来年度、小5~中3の英語から「デジタル教科書」の導入を決めている。パソコンやタブレット端末で閲覧できるため文字の拡大や色の変更、文章を音声で読み上げるといった機能を加えることができる。視覚障害や学習障害がある児童・生徒も学びやすくなると期待されているが、傍島さんは「デジタル教科書が普及するまでには時間がかかるだろうし、端末の操作と教科書内容の理解の両方を器用にこなすのはかなり難しいのではないか」と心配する。
 「デジタル教科書の時代になっても、紙の拡大教科書が欲しいというお子さんがいるかもしれません。ボランティアがつくる拡大教科書はレイアウトがシンプルなので、使いやすいというお子さんがいるかもしれません。そうした要望に対応できるだけの体力を残しておかなければ」。傍島さんは「若い人たちの力も借りたい」と協力を呼びかけている。
 会員を募集しています。経験は問いません。柏市中央公民館で毎週火曜の午前10時から約2時間、作業を行います。年会費100円。問い合わせは、代表の傍島さん(04・7147・7722)へ。

タイトルとURLをコピーしました