ヤゴ救出作戦 松戸運動公園プールに300人

 トンボの幼虫、ヤゴをプールから救い出して飼育し、羽化したら空に放してあげよう――。子どもを対象にした環境学習イベントが松戸市の松戸運動公園プールであり、親子連れなど約300人が参加した。プール開きの清掃前にヤゴを助け出さなければ、水と一緒に流されてしまう。
 「ヤゴ救出作戦」と題したイベントは、子どもが不登校になった経験がある保護者でつくる市民グループ「不登校親子応援ねっと」が企画した。「学校に行く行かないにかかわらず、自然とのふれあいは大切な経験。生命の神秘と感動を子どもたちに伝えたい」。そんな景山益代代表らの思いに共感したNPO法人「とんぼエコオフィス」代表の薮内俊光さんが「一緒にやりませんか」と声をかけ、実現した。

松戸運動公園プールに300人

 薮内さんらはトンボがすめる水辺環境の創造をめざし、30年前から水質浄化などに取り組んできた。プールなどでのヤゴ救出も各地で開催している。今回は準備段階でギンヤンマの産卵を目撃したという。
 救出作戦は6月2日の午前と午後、2回に分けて実施された。参加した子どもたちや保護者は泥や落ち葉で濁った深さ20㌢ほどのプールに入り、網を使ってヤゴを採集。お目当てのギンヤンマのヤゴが見つかるたびに歓声が上がった。
 両親と参加した松戸市の小学4年生、喜多村柚愛さんはギンヤンマのヤゴを6匹捕まえ、「予想外に大きかったのでびっくり。大事に育て、トンボになったら放してあげたい」と目を輝かせていた。

記者も飼育体験 ギンヤンマ誕生 空へ放す

 私(記者)もヤゴがトンボになるまでを観察してみたくなり、ギンヤンマのヤゴを6匹捕まえた喜多村さん一家から2匹、分けてもらった。大きい方は緑色の体が透けて見える。羽化が近いのかもしれない。
 困ったのは餌だ。ヤゴは肉食で生き餌しか食べないという。ご飯粒やシラス干しをピンセットを使って生き餌のように動かしてみたが、食べてくれない。ホームセンターで冷凍アカムシを購入して与えた。
 飼育開始から1週間後の6月8日、朝5時半。水槽に立てた枯れ木に抜け殻があるのを見つけた。羽化して間もないのだろう。抜け殻は湿っている。カーテンの裏側の裾にギンヤンマがとまっていた。光り輝く羽を震わせている。尾の先から水滴が垂れた。
 車で数分のところに住む小学1年生の孫娘を呼び寄せた。幼いころに自然や生き物とのふれあいを体験してほしいと願っている。この春は、オタマジャクシを一緒に飼育。4匹がカエルになり元の池に放した。詳しい知人に写真を見てもらったところ、ニホンアカガエルだとわかった。
 部屋を飛び回るギンヤンマを、孫は飽きもせずに眺めている。夕方、公園に放しに行った。孫の指から勢いよく飛び立ち、暮れなずむ風景に溶け込んで見えなくなった。見送る孫の背中がさびしそうだった。
 2匹目が羽化したのは6月23日。差し出した指に飛び乗った。 (遠藤秀美)

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