
一人の幼稚園児が描いた母親は、ピンクの布を頭にまとっていた。同じクラスの子が聞いた。「どうして布をかぶっているの?」「前髪を切りすぎたの?」。そんな小さな不思議から、園児たちは「パスポート」を手に、世界に触れる旅へと飛び出した。そして、自分たちの「ばんぱく」を開くまでに成長していった。
松戸市にある私立の新松戸幼稚園。約240人の園児の中には、バングラデシュや中国、韓国、アメリカ、フランスなど、地域で暮らす様々な国籍やルーツを持つ子どもたちがいる。
昨年5月。母の日のプレゼント用に、年長組の園児たちがエコバッグに母親の絵を描いた。マレーシア出身の女児が描いた母親は、頭に布をかぶっていた。「どうして?」。園児たちの興味が膨らんだ。「じゃ、お話を聞いてみよう」
園に両親を招いた。マレーシアがどこにあり、どんな料理があるのか。イスラム教の教えで女性はヒジャブと呼ばれる布をかぶっていることなどを教えてもらった。母親のアイン・アザマンさん(42)は「マレーシアのことを知ってもらえてうれしかった。子どもたちは将来、海外に行くこともあるだろうから、小さなころから正しい情報に接することは大切」と喜んだ。
もっといろいろな国の話を聞きたい。先生たちがパスポートを作ってくれた。外国出身の親だけでなく、海外で暮らした経験のある親も来園。みんなのパスポートにスタンプを押し、話をしてくれた。最初は1クラスの取り組みが、年長組の全3クラスに広がった。
アメリカ出身の母親は、ネイティブアメリカンのネックレスをしてきた。「私たちも作りたい」。紙で作ると、次は「 踊りたい 」。「10人のインディアン」の曲に、自分たちで振り付けをした。世界の山や動物に興味を持った子どもは、空き箱や模造紙でエベレストや象を作っていった。
昨年12月。「ねんちょうばんぱく」が開かれた。教室に世界の山々や動物が展示され、ネイティブアメリカンや台湾夜市のコーナーも登場した。
寺田美子園長は「子どもたちが世界を知るきっかけになったのでは。興味あることを夢中になって学ぶことが、これからの学びの基礎になってくれたらうれしい」と笑顔をみせた。



