プラネタリウムに投影された柏の星空が、ウクライナの星空へと移り変わる。星々の姿は同じ。だけどそのまたたきの下、戦禍で苦しむ人々がいる。ウクライナから避難してきた女性が、柏の小さなプラネタリウムで星と人々の暮らしを語り、8000㌔離れた地をつないだ。
11月29日。柏市立図書館にある柏プラネタリウムで、特別プログラムが投影された。ドーム直径6㍍、定員30人のアットホームなプラネタリウムで解説したのは、オレナ・ゼムリヤチェンコさん。ウクライナ北東部のハルキウにあるプラネタリウムの解説員だ。年末に必ず、夫と二人でコメディー映画「ホーム・アローン」を楽しむような生活は、2022年に一変した。
ハルキウはロシアとの国境から約30㌔のウクライナ第2の都市。ロシア軍の激しい攻撃で街は破壊され、日本に夫と二人で避難。プラネタリウム関係者の協力で、日本各地でウクライナの星空解説をしてきた。
この日、小さなドームが暗くなると、柏の夜空が映し出された。日本語ナレーションを担当する柏プラネタリウム研究会の駒井仁南子代表が「ゆっくりとウクライナへ旅をしましょう」と話すと、星々が動き出し、北緯50度のハルキウの星空が頭上に広がった。オレナさんは秋の星座に触れながら、天文学の新しい知見も分かりやすく解説していく。
ドームには、ウクライナでのクリスマスを伝える写真も映し出された。肉や卵などを食べない断食の習慣やクリスマス当日の特別な料理……。クリスマスツリーの写真では、絶え間ない空襲警報と爆発音の下、「子どもたちが身の危険を感じないように、地下に飾られている」と伝えた。ロシア軍の攻撃で破壊された住宅や大学、ショッピングモ―ルの写真も。「私の国で起きている恐怖の、ほんの一部」「ウクライナとウクライナの人々が、世界の助けを必要としていることを忘れないでください」と語りかけた。
投影は、朝焼けのハルキウの空に登る太陽で締めくくられた。
オレナさんを招いた駒井代表は「暖炉の前で聞くような距離感でオレナさんの温かさが伝わり、ウクライナを身近な場所として感じてもらえたのではないか」。オレナさんも「小さなプラネタリウムだったので、みんなが家族みたいで温かな気持ちになれた」と振り返った。そして、ウクライナに残る両親に思いを寄せ、言葉を詰まらせた。「早く平和になって、パパとママをギュッと抱きしめたい」
星空が繋ぐウクライナ 避難の解説員、柏プラネタリウムで



