就学前の子どもたちに、一足早く小学校生活を体験してもらう、松戸市の「わくわく!小学校体験ルーム♪」が好評だ。小学校の空き教室を改装した体験ルームで、授業や模擬給食の体験をしてもらう。入学したばかりの子どもが小学校になじめない「小1プロブレム」を、少しでも軽減しようという取り組みだ。
体験ルームでは、休み時間も含め、おおむね2時間ほどを過ごしてもらう。「朝の会」やプリントを使った簡単な「授業」、おもちゃの食材を使った「給食」などが体験できる。
昨年12月、まず松飛台小学校で試行が始まった。小学校に入ったばかりの子どもが、先生の話を聞けなかったり、ずっと座っていられなかったり、という「小1プロブレム」が問題になるなか、同小では、幼稚園、保育園などとの連携に取り組んできた。そこで出たアイデアが「小学校に空き教室があるのだから、体験専用の教室にしたらどうか」というものだった。体験ルームで楽しく過ごしてもらうことで、小学校入学への不安を減らすことができないか、という狙いだった。
空き教室をペンキできれいに塗り直し、小学生気分を少しでも味わってもらおうと、市職員が不要になったランドセルや算数セットを自宅から持ち寄るなどし、ルームを整えた。
利用できるのは、松戸市内の幼稚園、保育園、認定こども園で、主に就学前の年長児が対象。ルームの先生役は園の先生が務め、小学校側は、校長や教諭が手の空いている時に対応し、子どもたちからの質問に答えたりする。
園側からは「実際に体験することで、小学校入学に向けて子どもたちの期待が膨らんだように感じる」など、前向きな感想が寄せられた。
そこで、市内全域の子どもたちが使いやすいようにと、今年9月からは馬橋北小、大橋小にもルームを開設。3校体制で本格的に動きだした。今年度の申し込み(実施済も含める)は、57園から計約2千人。来春の入学予定者の6割ほどが利用することになる。
広く受け入れる常設の体験ルームは、千葉県内では初めてといい、市幼児教育課の安蒜孝哲課長は「体験ルームで楽しく過ごしてもらうことで、ワクワク感をもって入学して欲しい」と期待している。
最初は緊張 次第に教室に笑顔
「わくわく!小学校体験ルーム♪」では、どのような取り組みがされているのか。11月7日、馬橋北小で公開保育があり、取材で訪れた。
午前10時過ぎ、新松戸幼稚園のバスが小学校に到着した。緊張した顔つきの園児26人はまず、新井辰治校長の案内で小学生の授業を見学。その後、体験ルームに入って、それぞれの机と椅子の席へ。黒板に向かって整列して座るのは、幼稚園や保育園ではない体験という。まず「朝の会」。先生が一人ずつ名前を呼ぶと、元気よく「はい」という返事が返ってきた。
プリントを使った簡単な「算数」をした後には、エプロンを着ておもちゃの給食を配膳したり、教科書やノートの入ったランドセルを実際に背負ってみたり。子どもたちの緊張は次第にやわらぎ、笑顔が教室内に広がっていった。そして、子どもたちが園で調べたことを発表する「生活」の授業や、歌を歌う「音楽」では、大きな声が聞こえるようになった。
新井校長が教室に顔を出すと、子どもたちからは「給食の時間はどれくらいありますか?」「給食には何が出ますか?」「小学校におもちゃはありますか?」などの質問が相次いだ。体験は約2時間。正午過ぎには子どもたちは「楽しかった」と笑顔で学校を後にした。
同園の寺田美子園長は「子どもたちは、小学校に入って難しい勉強をすると不安に思うこともあるが、園での生活や遊びは小学校の勉強につながる『学びの種』なので、そのことに子どもたち自身が体を通して気づいてくれたのではないか」と話していた。


