
2011年の東京電力福島第一原発の事故による放射性物質で汚染された「指定廃棄物」を巡り、松戸市は基準値の8000ベクレルを下回った放射性焼却灰の処分を始める方向で動き出した。9月30日付で、環境省へ一部指定取り消しを申請した。処分先の見通しも立ったとしており、指定解除されれば今年度は約125トンを処分する方針。千葉県内で指定廃棄物の処分は初という。
福島第一原発の事故では、放出された放射性物質が東葛地域にも流れ込み、「ホットスポット」と呼ばれる状況になった。1キロあたり8000ベクレルを超える焼却灰や汚泥などは、「指定廃棄物」として国が長期管理施設で管理することになった。しかし、千葉県内では施設設置場所が決まらず、各自治体が一時保管したまま、現在に至っている。
松戸市は、指定廃棄物約944トンを市内のクリーンセンターとクリーンセンター跡で一時保管。このうち、自然に放射能濃度が下がり、8000ベクレルを下回った廃棄物が553トンとなり、25~27年度の3年間で処分することにした。今年度は約125トンを指定廃棄物からはずし、処分するための費用5940万円を9月補正予算案に計上、市議会が9月30日に可決した。市は同日、指定廃棄物の一部指定解除を環境省に申請した。
この時期に指定廃棄物の処分を始める理由について市廃棄物対策課は「環境省とも打ち合わせをしながら、安全に処理するための協議が整ったため」と説明する。指定解除後に市外の処理業者に引き渡す手続きをとるが、業者名、処理方法、処分地は非公表という。理由は「業者や受け入れ先自治体から、安全に処理できる廃棄物であっても、風評被害が発生する恐れがあり、非公開を求められ、承諾した」という。
千葉県内では千葉市でも2016年に指定解除したが、処分はまだされておらず、松戸市によると処分が始まれば県内初のケースになるという。
事故当時、東葛エリアでは各地で指定廃棄物が発生、柏市では約1064トンが今も清掃工場など市内3カ所に一時保管されている。太田和美市長は、「8000ベクレルを下回っていたとしても、受け入れ先が見つからない。そもそも、柏市ではコンクリート製の施設内に保管しているため、計測自体も難しい」と説明する。そのため「国が長期管理施設を作るのが大原則。新しい内閣が発足したら、周辺自治体と相談しながら改めて要望していきたい」という。



