
運転手不足などで路線バスの減便や廃止が相次ぐなか、柏市の住宅地「柏ビレジ」の自治会がコミュニティーバスの運行を始め、注目されている。コミュニティーバスは市町村が運行するのが一般的で、地域住民主導での運行は県内でもめずらしいという。運行開始から1カ月の利用状況などを取材した。
「柏ビレジコミュニティバス」は7月2日から走り始めた。当面は火、木、土曜の週3日、5便ずつの運行となる。ルートは、つくばエクスプレス「柏たなか駅」から柏ビレジ、商業施設「モラージュ柏」を経て同駅に戻る循環コース。28人乗りのマイクロバス1台で運用している。
回数券や年間パスポートを事前に購入すれば、だれでも乗車できる。スマートフォンで表示するデジタルチケットもある。回数券利用時の運賃は、1回の乗車で大人(高校生以上)220円、子ども(小中学生)110円となっている。
1981年に入居が始まった柏ビレジは、東京ディズニーランドの約1・2倍にあたる約63㌶の一戸建て住宅地。現在、約1500戸に約4000人が居住している。2022年の推計では、65歳以上の高齢化率が約56%だった。
最寄りの柏たなか駅へのバス便はなく、徒歩で30分以上かかる。自治会が18年に実施した調査でも、買い物や病院への移動に不便を感じている人や、運転免許証返納後の移動に不安を抱えている人が多かった。
高齢化が進むなか、地域の足を確保しようと自治会が立ち上がった。コミュニティーバス運行を検討するプロジェクトチームを21年に結成。自治会長のシュピンドラー千恵子さんは「さまざまな知識のある人材がそろっていたので、自力で運営できるのではないかと考えるようになった」と振り返る。
運行費は年間約1000万円。運賃収入でまかなえる額ではない。プロジェクトチームのメンバーは地域の企業を回り、協賛金を募った。足りない分は柏市に補助を依頼した。
我孫子市の貸し切りバス会社「アビコ西武観光」に運行を委託した。22年11月には1カ月間の実証実験を行い、ルートや運行日時などを策定。ことし6月、国土交通省関東運輸局の事業許可を取得した。
7月度の利用実績によると、運行日数13日の総乗車人数は計334人。バス停別乗降車数はモラージュ柏が最多で、柏たなか駅東口が続く。曜日別乗客数では火曜が過半数を占めた。
第1回集計を受けて、シュピンドラーさんは「乗客はまだ少ないが、必要としている人はいる。小回りがきく利点を生かし、愛される地域の足になりたい。継続していくために何をすべきか、みんなで考えようと思う」と話した。
問い合わせは、柏ビレジ自治会事務局(04・7132・1925)へ。