
桜の名所に、チューリップなど四季折々の風情が楽しめる柏市布施にあるあけぼの山農業公園内に、全国でも珍しい本格的な穴窯がある。公園事務所棟の裏手斜面に築かれた窯は長さ6・8メートル、幅2・8メートル。1995年に建設され、2008年まで陶芸教室と共に活用されていたものの、その後約15年間使用されず、ひっそりと眠っていた。
近年、柏市在住の陶芸家や芸術家から使用したいという声が寄せられ、2023年、有志7名が再生プロジェクトを立ち上げた。窯の外側のひび割れは耐火モルタルなどで補修。再活用に向けての試運転では内部の温度が1300度まで上がり、「専門家から、この窯は性能が良い」と言われたと同公園の鈴木有希子さん。薪は主に市内の不要な間伐材を使い、三日三晩交代で薪をくべて温度を上げる作業が必要だ。
今回、穴窯復活に向け柏の粘土を陶土の一部に使った陶芸教室3講座が2月にスタート。『抹茶椀をつくる』、『植木鉢&オブジェをつくる』、『電動ロクロを使用した自由作陶』の各講座に市民が挑戦した。植木鉢&オブジェ教室には講師の寺前好人さん指導の下、女性4人が参加。「初めて土に触れてその感触が魅力です」「無心になれて、楽しい」と作品づくりに時間も忘れ熱中していた。
火を守って三日三晩
完成した作品は3月8日に穴窯に並べ入れられ、9日から11日までの三日三晩、講師と生徒有志が交代で薪をくべ、火を守って焼成。
窯の温度が冷めた頃合いの3月17日、講師と生徒39人による窯出しが行われた。抹茶椀教室に参加した宇治知海さん(柏市・46歳)は、「調理師でもあることから創作活動の一環として捉えています。自分の焼いた陶器を手に持つと最初は熱い、熱さを感じると愛おしい。この様な催しは地元愛にも通じる」と感慨深い面持ちだった。電動ロクロ教室を担当した講師の長妻巧尚さん(柏市・46歳)は、「16歳から陶芸をはじめて30年、人づてに園内の穴窯のことを聞き、地域起こしの一環になるのではと感じた。穴窯の技術を若い世代に繋ぐ活動になっていって欲しい」と話した。 再生プロジェクトのメンバーらは穴窯の利活用及び芸術活動を通した『布施地域の活性化』を目標に、今後『布施焼(仮称)』として販売も目指している。柏市に新たな産業、芸術文化の種が撒かれた。
今年度の穴窯利用については検討中。詳しくは、同農業公園(04・7133・8877)まで。