(キネマの世界)BAUS 映画から船出した映画館

©本⽥プロモーションBAUS/boid

 「あした」は、暗闇から始まる。
 1927年。活動写真に魅了され、「あした」を夢見て青森から上京した兄弟ハジメとサネオは、吉祥寺初の映画館・井の頭会館で働きはじめる。兄・ハジメは活弁士、弟・サネオは社長として奮闘。劇場のさらなる発展を目指すが、戦争の足音がすぐそこまで迫っていた。
 今回ご紹介する上映作品は、『BAUS 映画から船出した映画館』です。当劇場では珍しい封切上映作品。
 この作品は、「映画館」で働く人間の物語として、当劇場としても封切で上映できることに意義がある。30年の歴史を築き、惜しまれつつも2014年に閉館した「吉祥寺バウスシアター」。
 そこから遡ること約90年、1925年につくられた“井の頭会館”の話からはじまる。当時の時流に翻弄されながらも、娯楽を届け続けた家族の長い道のりを辿り、「映画館」という、暗闇の中でありながら、あらゆる人々にとって開かれた空間として愛されていたことが、この映画では映し出される。
 現在の単館系映画館も閉館が相次ぎ、苦境に立たされておりますが、お客様と従業員、そしてこの映画の想いと、ささやかでも「映画館」として「あした」を夢見る場所で在り続けたい。(松井 智大)

3/21~キネマ旬報シアター柏で上映 終了日未定

タイトルとURLをコピーしました