
今回ご紹介する映画は『愛に乱暴』です。吉田修一のベストセラー小説を、主演 江口のりこ、監督 森ガキ侑大で映画化。 世界12大国際映画祭に数えられるカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭のコンペティション部門に選出された本作。
『悪人』『さよなら渓谷』『怒り』など数多のベストセラー作品が映画化されてきた吉田修一だが、今作も見事なヒューマンサスペンスになっており、そんな息もつかせぬ緊迫感のある原作を映画の中で見事に演じて見せた江口のりこ。ユニークで個性的な役柄を演じる機会が多いが、今回は徐々に平穏を失っていく“妻”を怪演している。
森ガキ侑大監督は物語に隠されたある仕掛けから、映像化は難しいと思われた原作小説を繊細にアレンジしていて、フィルムを使って主人公の背後からまとわり付くようなカメラワークで撮影を敢行し、原作、監督、主演、3人の個性がぶつかり合い、見事に融合した上質な日本映画に仕上がっている。
愛を感じづらい世の中を生きる現代社会。愛の表裏に暴力も人間には持って生まれたものであります。
『愛に乱暴』今、映画化された意味がとてもある作品だと思います。(松井 智大)
10/26(土)~キネマ旬報シアター柏で上映