(キネマの世界)至福のレストラン 三つ星トロワグロ

 今回紹介する作品はドキュメンタリー映画界の巨匠、フレデリック・ワイズマン最新作『至福のレストラン 三つ星トロワグロ』です。図書館や市庁舎などの公共機関を取り上げる一方で、オペラ座やナイトクラブなどハイカルチャーからサブカルチャーまで、ありとあらゆるテーマを扱ってきたワイズマン。今作では親子3代にわたりミシュラン三つ星を55年間持ちつづけるフレンチレストラン「トロワグロ」の秘密に迫ります。
 ワイズマン作品と言えばまずその上映時間の長さが特徴として真っ先に浮かびます。ひとつ前の作品『ボストン市庁舎』は274分、今作は240分という長尺です。4時間!? とひるむ気持ち、よくわかります。しかし、この長さはワイズマンの誠実さの証なのです。シェフたちが丹念に調理する過程、ホールスタッフたちの洗練されたサーブ、さらには食材の仕入れをはじめレストランに欠かせない工程を丁寧に捉えたからこそ、この長さなのです。
 94歳にしていまだ精力的に新しい分野へ切り込み続けるワイズマン、名前の通りまさに賢者! 次の作品では一体何を取り上げるのか、今から楽しみです。 (内山 綾子)

 8/23(金)~キネマ旬報シアター柏で上映

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