(キネマの世界)関心領域 The Zone of Interest

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 今回ご紹介する作品は、第二次世界大戦中のポーランド、アウシュヴィッツ収容所の所長を務めた人物とその家族の物語。
 その家は収容所とは塀を隔てて隣同士で建っている。塀の向こうは見えなくとも、音や声は聞こえる。大人は隣で何が起こっているかわかっているが、それは日々の感情には何の影響も与えない。家族は裕福な生活を続ける。
 以前『福田村事件』の森達也監督が語っていらしたこと、「普通の人が、普通の人を殺す」こと、やさしい夫や、賢い妻が、何かのために虐殺に加担することの恐怖、集団の中で冷酷になってしまう人間の愚かさを淡々とたたき出す作品です。
 5月24日に公開されてから予想外のロングランを続け、初週より大きなスクリーンに移動したシネコンもあったようです。客層は老若男女かたよりはなく、特に若年層が目立つ、とのニュースには希望を感じました。
 今年の米アカデミー賞で、国際長編映画賞と音響賞を受賞。映像と同じくらいかもしくはそれ以上、音が背景を物語る作品です。映画館で観ることを強くお勧めします。
(増田 玲子)

7/20(土)8/2(金)キネマ旬報シアターで上映

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